小悪魔には勝てない
5分ほど歩いてようやく俺たちは目的地のショッピングモールに到着した。
ここは駅にも近く、映画館やレストラン街などが併設されているので休日は特に混むのだ。案の定、GW中と言うこともあり、モール内は凄いごった返している。
「それで、どこの店に行くんだ?」
俺は黒羽に聞くと
「まずは服を見に行きましょう!先輩、こっちですよ~」
と言って俺の手を引っ張る。
「おい、ちょっとまて危ないだろ!」
俺の言葉を完全無視して黒羽は目的の店へと移動する。
目的の店は、俺でも知っているブランドの服屋で、カジュアル系からきっちりとした服まで多種多様の服がおいてある。
店に入るとそこら中に女性用の服が置いてあり、男の俺はちょっと場違いな感じがしてならない。
「いや~、流石にここは場違い感がやば過ぎるだろうっ!おわ!!」
服を選んでいる黒羽を尻目に、ソワソワしていた俺はいきなり肩を叩かれて驚いてしまった!
「ちょっと先輩!何驚いてるんですか?」
「だってお前、いきなり肩を叩いて来るから!」
「全くもう、しょうがないですね先輩は!
そんな事よりもほら、こっちのグリーンとブラウンだと、どっちがいいですかねぇ?」
黒羽はそお言うと、右手にグリーンのTシャツと左手にブラウンのワンピースを見せて来た。
どうやら、俺に選ばせるつもりの様だ。
俺はどちらが正解なのか、心の中で考えた。
(うーん、小さい黒羽ならブラウンのワンピースの方が大人っぽく見られる様な気がするんだよなぁ・・・)
俺が黙り込んでいると黒羽が
「ねぇ先輩。なんか今、梓に対してちょー失礼な事考えていませんでしたか?」
「いや、なんの事かな?」
図星をつかれた俺はなんとか誤魔化しにかかる。
(なんて、勘のいい奴だ!)
すると黒羽は笑いながら(目が笑って無い)俺の脇腹をつねる。
「痛い、痛い、ほんと、本当だって」
「嘘ですよねぇ、だって先輩、嘘つく時はいつも眉間に皺を寄せますもん!」
「えっ!うそマジで?!」
俺が驚いていると、黒羽は舌を出しながら
「嘘ですよーだ!」
と、おちょくって来る。
「お前、そりゃ無いだろ」
「なに言ってるんですか!先輩だって梓の事をどうせ、幼児体型とか小さいとか思ってたんでしょうが!」
「いや、小さいとは思ってるけど幼児体型とは思って無い。てか、自分でも思ってるんじゃねーか!」
「うるさいですよ先輩。それよりどっちだか決まりましたか?」
「ああ、俺は左のワンピースの方が似合うと思うぞ!」
「分かりました。ちょっと試着して来ますから、待ってて下さい」
「はいはい、分かったよ」
黒羽は、ワンピースを持って試着室へと向かっていった。
しばらくして試着室のカーテンが開き、中からブラウンのワンピースを着た黒羽が出てくる。
「ふふん、どうですか先輩!似合ってますか?」
黒羽は、ワンピースの裾をつまみながら、聞いて来た。
「うん、可愛いよ、すごく可愛い」
「もーう、なんですかその返事は!全然心がこもってないじゃ無いですか!」
黒羽は頬を膨らませながら不満そうな顔をしている。
「あーも、分かったよ!凄く似合ってるよ黒羽!」
俺は、半ば投げやりに褒める。
すると黒羽は
「ですよね~!梓も、そう思ってたんですよ!」
(おい、このヤロー!!)
俺は口には出さなかったが、内心では思いっきり突っ込んでいた。
「それじゃあ先輩、お願いします!」
「はっ?なにが?」
「なにって、もちろん決まってるじゃないですか!」
「いやだからなにが?」
すると黒羽がワンピースを指して
「このワンピースに決まってるじゃないですか!」
「おい!もしかして、俺に買えと?」
俺が恐る恐る聞くと、黒羽は満面の笑みで
「はい!」
と答えた。
「取り敢えず聞いておくけど、なんで俺が買うの?」
「えっ!もしかして、梓に買わせる気ですか?むしろ、こんな美人にプレゼントできるなんて、先輩は本当に幸せ者ですね!」
黒羽の言葉に俺は唖然としてしまった。
(なにを言ってるんだコイツは?)
俺はそう思うが、皆さんはどう思う?
「ふざけるな、なにが幸せだよ!てかこのワンピース、いくらすると思ってるんだよ!」
「えー、良いじゃないですか偶には!」
「だ、め、だ!」
俺がきっぱり断ると、黒羽は一度深呼吸してから、いきなり抱きついて来て、上目遣いで俺を見て来る。そして
「ねぇ先輩、梓からのお願いです」
と言ってから、今度は耳に近づいて
「梓にプレゼントして下さい」
蕩けそうな甘ったるい声で囁いてきた。
それも、何故かCVあやねるの声に聞こえた気がする。
そして、耐えきれなくなった俺は
「あ、ああ・・・分かった」
と、言ってしまった・・・
この日、俺は黒羽に完全敗北した・・・
だってしょうがないじゃないか!
俺は耳が弱点なんだよ!
毎晩、動画サイトのasmrを聴きながら寝てるよ!
誰か俺に賛同できる奴はいないですか!
いたら、どうかご一報下さい!
その後、俺はめちゃくちゃ高いワンピースを買って、黒羽にプレゼントした。
「うふふ、先輩ありがとうございます!
やったー!先輩からの初プレゼントだー!」
黒羽のやつは余程嬉しかったのか、ワンピースの入った袋を抱えながら飛び跳ねている。
(うん、可愛い!うさぎみたい)
「それで、次はどこに行くんだ?」
「そうですね、そろそろお腹が空いて来ましたので、どこかでご飯でもどうですか?」
たしかに、時刻は11時半を過ぎたぐらいで、レストラン街はオープンしている時間帯だ。
「それじゃあ、レストラン街の方へ行くか?」
「了解です先輩!」
俺たちはレストラン街の方へと歩いていくが、ずっと黒羽が俺の腕に抱きついてきて、ものすごい注目を浴びる事になった!
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