日和と両親
時間は、京が帰る前の木村家に遡る。
時刻は午前8時頃、みんなで朝食を楽しんでいると日和の父こと、木村雄也のスマホが鳴る。
「はい、もしもし」
雄也は食事をやめ、スマホを手にリビングから出る。
「え!なんだと!本当か?」
リビングまで聞こえる雄也さんの声から、どうやら仕事でトラブルがあったようだとわかる。
すると、電話が終わった雄也さんがリビングに戻って来た。
「アナタ、何かあったの?」
とエリーナさんが質問すると、雄也さんは
「ああ、仕事でトラブルが起きたようだ。本当なら、これから3人で出かけようと約束していたんだがすまん!」
と申し訳なさそうに謝る。
「私達は大丈夫だから、気にしないで行ってらっしゃい!ね、日和」
「うん、大丈夫だよお父さん!お出かけは、私とお母さんの二人で行くから」
「すまない二人とも、この埋め合わせは必ずするから!」
と言って、雄也さんは急いで着替えて、会社に向かった。
その後、京は龍一のマネージャーが運転する車で帰り、家には佳代とエリーナと日和の3人だけになった。
「それじゃあ日和、私たちはそろそろ行きましょうか」
「うん、分かった!」
エリーナと日和は私服に着替えて、家を出る。
すでに佳代は仕事に向かったので、家にはエリーナと日和しかいない。
エリーナは最後に、火の元と、戸締りを確認してから家に鍵をかける。
日和とエリーナは車庫に行き、エリーナの愛車のレクサスに乗り、出発した。
今日の目的は、入間にあるモールでの買い物だ。
およそ、2時間ほどのドライブを楽しみ、目的地に到着すると、予想通り混んでいた為に駐車をするのも一苦労のようだった。
車を降りて、二人でモール内を歩いていると周りの視線が気になった。
いつもは私にくる視線が、今日はお母さんの方に集まっている。
お母さんは、もう42歳なのにも関わらず、ハリウッド女優顔負けのプロポーションと私には無い大人の色気と言うのか、何と言うかそんな雰囲気を纏っているのでしょうがない。
二人で歩いていると、やはりと言うべきか複数の男達が話しかけてくる。いわゆるナンパってやつだ。いつもはお父さんが牽制しているので寄ってこないのだが、今日は残念ながらそのお父さんはいない。
(どうしよう・・・)
私が困っていると、お母さんは巧みな話術で、ナンパ男達をかわしていく。
お母さんの会話術は本当にすごいと思う。
相手を刺激しない言い回しに、誘いをバッサリと断る胆力、そしてどんな状況でも慌てず、臨機応変に対応する所は、同じ女として凄く参考になる。
いくつかのお店を周り、買い物をしたらちょうどお昼になったので、二人でモール内のお店でうどんを食べた。
お母さんは、アメリカ出身なのにも関わらず日本食が好きで、特にそばやうどんのような麺類には目がないのだ!
食事を済ませた後、いくつかのお店を周り、お母さんがどこかへと連絡をしてから何故か、六本木へと向かった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
僕は今、凄く不機嫌でいる。
何故かって、せっかく家族水入らずで、出かけるはずだったのに、急に仕事が入ってしまったからだ!
それも、一番面倒な所でトラブルが起こり、その後始末が全然終わらない上、GW中と言う事もあり、人が足りない。
3時間後
ようやくトラブルも収まり、ひと段落が着くともう3時間ほど経っていて、僕は落胆と共に、心配した。
今日は、入間にあるモールに行く予定だが僕がいない。つまり、僕のマイハニーアンドエンジェル(エリーナと日和)をクソムシ(ナンパ野郎)どもから守ることが出来ない!
僕の中では動揺が広がっていた。
(どうする、今からすぐに電車かタクシーで向かうか、それとも正樹に頼んで警察の人にガードしてもらうのも・・・)
そう考えていると、部下の一人でチーフを任されている木下さんが声をかけてきた。
木下さんは、まだ20代後半にも関わず、優れた統率力と手腕で瞬く間に出世したやり手の女性だ。
「あの部長、もし良ければお昼をご一緒しても良いでしょうか?」
どうやらお昼のお誘いのようだ。
断ってもよかったが、せっかくの休みにも関わらず、仕事に来てもらったので今回は誘いを受ける事にした。
「ああ、もうそんな時間か。うん良いよ、どこにしようか?社食は開いてないし、近くの店でいいかな?」
「はい、部長とご一緒ならどこでも大丈夫です!」
「そうか、なら行こうか木下さん」
僕は木下さんと共に近くにあるカフェに向かう。
途中木下さんは、僕の方をチラチラ見ながら、腕を絡めようとしてくるので僕はそれを自然と避ける。
こう言った行動をするのは何も木下さんだけでは無い!
部署を問わず、いろんな女性が僕と会うと、話しかけてきたり、触れようとして来たり、時には誘ってきたりする。
食事の誘いや休日の誘いなどは日常茶飯事だが、一番迷惑なのは夜の誘いだ!
これに関しては本当に迷惑している。
何度断っても、誘ってくる女性もいるからだ。その事で僕は、何度か正樹に相談したことがあるが、正樹は決まって最後に
「モテるのは大変だな兄貴、まぁがんばれ!」
と言って茶化してくるので、あんまり相談したくは無いが、正樹も大の愛妻家である僕が他の女性に屈するわけが無いと分かっているから言っているだけだと理解しているので、怒るに怒れないでいる。
しばらくして、目的のカフェに到着し、僕と木下さんは席に着き、注文をする。
しばらく食事をした後、木下さんが話しかけてきた。
「あの部長」
「なにかな、木下さん」
「今日、この後は空いてますか?もし、空いていらっしゃるなら私と」
木下さんが何かを言いかけた瞬間、僕のスマホが鳴った。
プルルルル!!
「あっ!電話だ。ごめんね、ちょっと席を外すよ」
僕は席を立ち、スマホを持って外に出る。
電話を掛けてきたのは、愛しのハニーこと、エリーナからだ!
僕はすぐに電話にでる。
「もしもし、どうしたのエリーナ?」
「雄也さん、あのね・・・」
僕はおよそ5分程度の電話を終わらせてから店に戻り、会計を済ませる。
その後は会社に戻り、残りの仕事を済ませた後、僕は電車で六本木へと向かう。
六本木駅に到着すると、僕は待ち合わせの場所まで走る。
するとそこには、マイハニーこと、エリーナとエンジェルこと、日和がいた。
********
六本木で合流した私たち家族はそのまま、六本木の街を歩く。
そして、とある高級ホテルの中にあるレストランへと入る。
どうやら予約をしていたようで、中に入るとすんなり席に案内された。
お母さんに事情を聞くと、このレストランは叔母さまの知り合いのシェフが経営しているようで、今日の為に特別に予約を頼んだそうだ。
私達は、運ばれてくる料理を堪能した。
どれも素晴らしく、手が混んでいて美味しかった!
ああ、今日は本当に良い休みの日だ。
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