京が帰ってからの木村家


京が帰り、見送りをした佳代は涙を拭いてリビングへと向かう。


リビングには、エリーナさんが仕事をしていた。エリーナさんは、私と同じで仕事をしているけれど、主に在宅ワークが基本なので私が仕事で家を空ける時は助かっている。


けど、やっぱり昨日に比べてリビングが寂しく感じてしまう。雄也さんは問題が起きたらしく、今朝早くに仕事に行き、正樹さんに至っては、一昨日の夜の急な呼び出しから帰ってきていない。

いつもの事ではあるが、それでも多分京は久しぶりに連れてきた友人である氷室君を紹介したかったと思う。


口には出さながいが、京は正樹さんに対して昔から承認欲求の様な感情があり、時々アピールをしたりしていたのだが、高校生になってからはあの事もあり、そう言った感情が見えなかったけれども、日和ちゃんの話を聞く限りでは、昔のような京に戻ってきているようだ。

けれど私は、それが嬉しく思う半面、怖くもあった。

もしまた、京が中学の時と同じようになってしまったらと思うと、母親として恐怖を感じてしまう。


それ程までに、あの時の京は見てられなかった。正樹さんが多少強引?に京をなんとかしてくれたけど、私では不可能だったといいきれる。


「はぁー・・・」


そんな事を考えていると自然とため息が出てしまう。するとエリーナさんが心配して声をかけてきてくれた。


「どうしましたか佳代さん。もしかして京君の事で何か考え事でも?」


私は、同じ子供を持つエリーナさんに相談する事にした。


「ふふ、やっぱりエリーナさんには隠し通せませんね。おっしゃる通り、京の事で悩みがあってねぇ・・・どうしたらいいと思う?」


「うーん、ちなみにその悩みって言うのはもしかして、正樹さんとの事ですか?」


「そうなのよ、あの子、本当は氷室君の事を正樹さんに自慢したかったんだと思うわ。でも、結局出来ずに最後まで、寂しそうな顔をしていたのよ」


すると、エリーナさんは少し考えてから


「それなら今度、お二人で京君のマンションに行ってみてはいかがですか?それならきっと京君も喜びますよ!」


「なるほど、それはいい考えですね!ありがとうエリーナさん。貴女に相談してやっぱり良かったわ!」


「うふふ、佳代さんにはいつもお世話になっていますからね!偶にはお役に立てて良かったです」


そう言って、笑いながらエリーナさんは立ち上がる。


「あれ?どうしたんですか?」


「実はこの後、日和と一緒に出かける予定なんですよ!」


エリーナさんはどこか、ウキウキな様子で話している。

久しぶりに会った娘とのお出かけだもの、しょうがないわよね。


「そうなの、楽しんで行ってきてね。私もこれからちょっと出かけなきゃいけないから、お昼はそれぞれでいいかしら?」


「分かりました。お昼は日和と二人で食べてきますね。それでは佳代さんもお気をつけて下さい」


「ええ、楽しんできてね」


エリーナさんは仕事道具を持ってリビングを出る。


私は、エリーナさんがリビングを出ていってから仕事用の携帯で電話をかけ、家を出た。



エリーナさんと日和ちゃんがお出かけしたのは、その5分程後だった。


**********


時刻は午後2時頃


誰もいない木村家の玄関が開く。


「ただいま、誰もいないのかい?」


そう言って入ってくるのは、この家の主人である木村正樹だ!


実に1日半振りに家に戻ると誰もいない。

例えるなら、苦労して手に入れた宝箱に何も入っていない様なものだ。


自室で荷物を置いて着替えた後、リビングへと向かう。そこには佳代の字で「みんな、出かけてるからよろしくお願いします」と書いてある紙があった。


それを読んでから


「タイミングが、悪かったみたいだな。どうやらみんな出かけているようだし、京もどうやら帰ってしまったみたいだな・・・はぁ、本当にどうしていつも俺は間が悪いんだよ」


と落胆した。


本当なら、久しぶりに会う息子ともっとゆっくり話したかったし、京の友人にも会ってみたかった。それなのにいつも、大事な時に仕事で会えないし、コミュニケーションを取れない。


クソ!犯罪者どもめ!息子との時間を潰しやがって、絶対に許さんからな!


息子と会えないせいでストレスが溜まり、俺はよく犯人達をストレスの捌け口にしている。同僚いわく、その時の様子がなんでも、凄く怖いらしくていつの間にか「鬼デカ」と異名がついたらしい・・・全く、誰だそんな異名をつけた奴は!


あー、本当にすまない息子よ!本当なら、もっと構ってやりたいし、いろんな事を話したい!

俺は基本、息子の近況を佳代から聞いているので、今回の京の帰省でもっと色々と話したかった。

悔しさと後悔だけが残る中、佳代からメールが届いていた。

それを見ると、俺は思わず泣きそうになってしまった。


メールには、友人の氷室君によると、京は俺の事を恨んではいなく、むしろ感謝している。

と言う内容だった。


俺は、必死に涙を抑えながらメールの返信をしてから、自室に戻り泣いた・・・


俺が泣き終わると、ちょうど佳代が帰ってきて俺に、今度二人で京のマンションに行こうと提案してきたので、俺は嬉しくなって佳代を抱きしめていたら佳代が、


「いきなりなにするんですか!辞めなさい!」


バチン!


「!?」


と言って、右手で頬を叩いてきた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


以上で、帰省編の終了となります。

次は日和の両親のお話しを更新しますのでよろしくお願いします。




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