ただひとりの親友


 カラオケ店を出て俺は真っ直ぐスタジオへと行き貰った音源と楽譜を渡して自宅へと帰る。


「お帰りなさい龍一様、お食事のご用意ができております」


 俺に挨拶をしてくれるのはこの家ただ1人だけいる家政婦の吉岡さんだ。


 基本アメリカに住んでいる両親は滅多なことでは日本には帰ってこないので広いこの家に俺は1人で住んでいる。


 だが流石に掃除が行き届かないので、吉岡さんがいると言う訳だ!

吉岡さんは凄くテキパキしていて料理の腕でも悪く無い。そしてこの広い家を1人で掃除しているほどのスキルが凄まじかった。


「ありがとう、すぐに行くよ」


俺は食事を済ませ明日のレコーディングに備えてすぐに寝た


レコーディング会場に到着し、俺は軽く挨拶を済ませた後スタジオへと入る。


(やべー!マジで緊張するぞこれ!)


スタジオの中は、いつも以上にピリついた雰囲気で、心臓の鼓動がいつもよりも、早くなっていく。

そんな心臓を、俺は深呼吸をして落ち着かせてから合図を送る。


少ししてから、伴奏が流れ俺は自分のありったけを吐き出すように歌い始める。


この曲は、キョー、いや「助さん」が、誰かに助けて欲しい時に作った曲らしく、この曲のサビの『誰か私の事を見つけてくれーよー、もう少しで消えてしまいそうな私の事を・・・」の部分が、なんだか俺の事と重ねてしまいそうになって、途中で泣き出しそうになり焦った!


その後、無事にレコーディングが終了し、俺はすぐにキョーに報告をした。


【龍一 今、レコーディングが終わった

    ぞ!楽しみしててくれ!】


【京  そうか、楽しみにしてるぞ!

      もし半端な歌だったら 

          容赦しないからな!】


【龍一  もちろんだ!】


俺はキョーに、RINEを送ると自宅へと向かった。

途中、キョーから歌がヒットしたらお祝いをしてやると、言われてめちゃくちゃ嬉しかった。


自宅に到着すると、いつもの様に吉岡さんが出迎えてくれた。

俺はリビングのソファに座り、コーヒーを飲んでいると、吉岡さんが深刻そうな顔でやってきた。


「あの吉岡さん、どうかしましたか?」


「はい、実は最近体調が悪く、しばらくの間お休みさせて頂きたくご相談の方をですね・・・」


「えっ!?本当ですか?それなら早くしたほうが良いですよね、俺の方は大丈夫ですから、体の方を大切にしてください」


「ありがとうございます」


「気にしないでください!吉岡さんには長い間お世話になりましたから」


「本当に、ありがとうございます」


 こうして長い間、お手伝いさんとして勤めてくれた吉岡さんは仕事を辞めることになり、俺はこのだだっ広い家にひとりで住む事になった!


いや、ちょっとまってくれ!


流石にひとりは寂しすぎだろーが!!!



寂しさに耐えかねた俺はキョーに電話した。


『どうしたんだリュー?』


「あのさ、お前んちに行ってもいい?」


『はぁっ?まぁ別に構わないけど・・』


「けどなんだよ。何か問題があるのか?」


『いや、ただ単にお前の寝る場所が無いって言うか、ソファ位しか無い!』


「そんな事かよ!気にしなくても俺はどこでも寝れるぞ!」


『あっそうかよ!全く、心配して損したわ!』


「それじゃあ、これから行くから頼むな!」


『オッケー』



俺はバイクでキョーのマンションまで向かう。

 キョーのマンションは、家から約2時間程の距離にあり、流石に疲れた。


俺がマンションに到着し、キョーの部屋のチャイムを鳴らすとドアが開きらキョーが出てきた。


「はやかったな!まぁ上がってくれ」


「ああ、悪いな」


俺は、部屋に入ると驚いた!


まずキッチンが凄かった!

 最先端と言うのか、見た事の無い器具や包丁が並んでいた。


それに、冷蔵庫の大きさが尋常じゃないくらいデカイ!多分普通の2倍くらいの大きさがある!あれって業務用じゃね?


次に驚いたのは、キョーの自室だった。

パソコンが3台あり、ギターにベース、ドラムにキーボードとさまざまな楽器があり、机の上には楽譜が散乱していた。


俺が部屋の探索をしていると良い匂いがしてきた。

俺はリビングの方に行くと


「お!匂いにつられてやってきたな!

ほら飯が出来たから食え!」


「おー!すげー美味そう!何この料理、初めて見たんだけど!」


「そうか?それはクスクスって料理で小麦粉から作られるんだ、今日は特製の魚介トマトスープと一緒にたべてくれ」


「クスクス?なんかすげーな!キョーはどうしてクスクスなんて知ってるんだ?」


「ああ、俺の母さんが料理研究家で、よく俺にレシピを送って来るんだよ!」


「ヘェ~、なんて名前の人?」


「「木村佳代」って言う名前だよ」


「たしか、木村佳代って超人気料理研究家じゃねーか!何度かテレビ局で見た事があるぞ!」


「そうか・・・」


「あれ?俺なんか悪いこと言った?」


「いや、ちょっと昔を思い出しただけだから気にするな」


「そうか、もし辛いなら俺に話してみろよな!聞くことぐらいはできるからさ」


「あはは、この間俺の前で号泣したやつのセリフじゃねぇな」


「それは言うなよな!全く!」


「はいはい、それで今日は泊まってくのか?」


「ああ、迷惑じゃなければそのつもりだが、だめか?」


「大丈夫だ!そのかわりソファで寝てくれ!」


「分かったぜ!」


こうして俺と親友のキョーは硬い絆を深めていった!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


これにて龍一の過去編は終了となります


次回は、ロリ後輩こと、黒羽梓の過去と京との出会いを書いた間話を投稿しますのでご期待くださいませ!

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