ボクっ娘の正体



ボクは今、最悪な状況にいる。


 今日は尊敬する先輩のご家族が出場する大会を見にボクは1人で国技館にきた。


 最初こそはどんなもんかと値踏みするつもりで来たけど試合を見てそんな事を考えていたボクを恥じてしまう。


「綺麗だ」


 率直に言って素晴らしいとしか思えなかった。美しい足運びに素早い組み手、まさに芸術だった。


 ボクはずっと試合を観戦していたけどあのお2人の試合だけは別次元だった。実際周りも試合が始まると一層熱が入り、歓声が飛び交い観客の視線がその方向へ向く。


 ボクは準優勝が始まる前に飲み物を買いに入り口近くの自販機へと向かった。すると二人組の男が私に話しかけてきた。


「ねぇねぇ君一人?俺たちとお茶しない」


「いえ、結構です。ボク急いでいるので」


「そんなこと言わないでさー」


(あーもーうるさいなっ!)


 ボクはだんだん機嫌が悪くなっていって挑発をしてしまった。


 そのせいで相手の方も口調が荒くなり次第に口喧嘩になりそして・・・


「てめー、女だからって調子に乗りやがって!」


「今更後悔してもおせーからな!」


 男たちが襲ってきた。ボクは最初に来た奴を背負い投げで倒した後、もう一人を挑発した。男は距離を取ってきたのでボクは前の男の事しか見ていなかった。


すると後ろから仲間だと思われる男が私を襲ってきた。


(しまった!やられる!)


と思っていると野次馬の中から1人の男が出てきて襲ってきた男に綺麗な関節を決める。


(誰?)


ボクが、混乱していると男が相手を投げた!


(綺麗・・・)


 男は関節を決めている奴を投げて、戦闘不能にするともう1人の方も投げる。こっちも綺麗な投げだった。


 ボクは思わず見惚れてしまいポカンとしていると警備員がやってきて、ナンパ男どもを連れ行った。ボクも連れて行かれそうになると助けてくれた男の人が庇ってくれたようでボクはそのまま解放された。


「あーあ、結局あの人にお礼言いそびれちゃったな!でもカッコいい人だったなー。それに凄い綺麗に投げる人だったなぁ、どこか葵先輩の流派に似てたんだよねぇ、今度聞いてみよう!もしかしたら知り合いかもしれないし、違くてもまたどこかで会えるかも知れないしね!もし会えたら今度はちゃんとお礼を言わなきゃな」


 ボクは観客席に戻り準優勝を見ながらそんなことを考えていた。

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