試合前の激励



 ひと通り挨拶をしたあと、俺は選手控室のある一階の階段を降りる。

 長い廊下を進み、控室を見つけるとドアを開け師範たちの元へと行く。


「お久しぶりです師範。激励しに来ましたよって師範には必要ないでしょうけど」


「おお、よく来てくれたね木村君、あっちに南もいるから呼んでこよう」


「いえ、自分が行きますよ」


 俺は南ちゃんの元へと行き、その肩を叩く。


「わあっ!!」


「うぉっ!!!」


 思っていたより南ちゃんは驚いた様で目にも留まらぬ早でステップを踏んで距離を取っていた


「おはよう南ちゃん。調子はどう?」


「えっ!?なんだ木村君か、びっくりしたなもう。うん、調子はいいよ」


「そう、それは良かった。頑張ってね」


「もちろん!優勝した時のご褒美、忘れないでね」


「当たり前だよ。南ちゃんが優勝できるように俺も応援するからね」


「いやー、木村君が応援してくれるなら負けられないなー!」


「「あはは」」


「ねぇ木村君、私負けないからね!」


「ファイト!南ちゃん」


「うん!」


 俺は挨拶と激励を済ませ観客席へと戻る。すると隣に座っている東子ちゃんが話しかけてきた。


「ねぇキム兄、南姉さんとなんかあった?」


「なんで?」


「昨日の夜から南姉さんの様子が少しおかしかったからさ」


「特には何もなかっ・・・あっ優勝したら2人でTDWに行こうって約束したぐらいかな」


すると東子ちゃんが突然驚いた様子で俺の肩を掴んできた。


「ねぇキム兄!それって、デ、デートって事だよね!えっ、じゃあ南姉さんとデートに行くって事?」


「ちょっ、ちょっと、待って東子ちゃん!ちゃんと順を追って話すから落ち着いてくれ!」


「そ、そうね。突然ごめんなさい」


「別にいいよ。えっと昨日の夜電話があって優勝したらご褒美が欲しいって言うからちょっとからかおうと思ってデートしようって言ったらまさかの本気にしちゃってさぁ」


「それで南姉さんとTDWに行くって事なんですね。・・・はぁまさか南姉さんに先を越されることになるとは、いやまだ優勝できると決まったわけでは・・・いや南姉さんの事だからたぶん本気で優勝を取りに来るだろうしあーーー!!」


右手を口元に押し当てながら何かぶつぶつと独り言を話し続ける東子ちゃんに、俺を始め、烏丸さんや、遠藤さんたちも少し恐怖を感じていた。



〜〜〜もう1話投稿します〜〜〜

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