仲のいい2人



翌日


 俺は電車に乗って会場の国技館へと向かう。


 途中でコンビニにより軽食を買おうと中へ入ると見覚えのある子を見つける。


「あれ?東子ちゃん。どうしたのこんなところで?」


「あっ!キム兄だ!おはようー、お腹すいたから食べ物買いに来たんだー」


「なるほどねー、それなら一緒に行こうか」


「いいよ!じゃあ奢ってね」


「ハイよ」


 俺と東子ちゃんは買い物を済ませ会場へと歩いていく。


「ねぇキム兄、聞きたい事があるんだけどいいかな?」


「んっ、何?」


「4月位にさ、うちの高校でキム兄にそっくりな人を見たんだけど、しかも2年生に転校してきた「歌姫」と一緒にいたんだよねー」


「!!」


 俺は思わず動揺してしまった。


 俺と日和の関係は秘密にしているからだ。流石に普段陰キャの格好している俺と従兄妹どうしだと、日和の世間体にも関係はしてくるので秘密にしようとしているのだ。


「さ、さぁ知らないなー。きっと見間違いだと思うよ。それより「歌姫」って何?」


「えっとうちの高校って毎年4美姫っての女子の中から選ぶらしいんだけどその1人で今年転校してきた帰国子女のハーフの子についたあだ名だよ!」


「それでなんで「歌姫」なんだ?」


「私もよく知らないんだけどすっごい歌が上手くてめちゃくちゃ美声なんだって」


「それで「歌姫」か、あいついつのまに」


「えっ、なんか言った?」


「気のせいだろ」


「そう、まあいいけど」


(それにしても日和もあだ名が付けられているとは思わなかったなー)


5分ほど歩いていると会場が見えてきた。


すでに入り口は開いているが人だかりで出来ている。


「おいおい、人がこんなにいるんだけど応援席どうするかな?」


「あっ、それなら遠藤さんと烏丸さんが先に行って席を取っといてくれてますから大丈夫ですよ」


「あの2人も来てるんだ?」


「うん、なんだかんだ言ってあの2人、仲が良いから」


 観客席へと行くと見知った人たちが手を振ってきた。


 黒髪で痩せ型な男性が「烏丸さん」で白髪で美人なのが「遠藤さん」だ。


 遠藤さんと烏丸さんは葵道場に通う門下生の人たちで確か10年位いるらしい。


 普段は2人とも師範が社長の不動産会社に勤めているそうで烏丸さんは遠藤さんに何度もプロポーズをしているがいつも振られている。


 それでも諦めない烏丸さんに遠藤さんが一度でも試合に勝てたら結婚するって約束をしているがこっちも1度も勝てないので俺と烏丸さんは意外と気が合う。


「お久しぶりです烏丸さん、遠藤さん!お二人も応援に来ていたんですね。それに相変わらずお二人は仲がよろしい様で」


 俺は手を出して遠藤さんと握手をした後烏丸さんとも握手を交わす。


「ああ木村君、久しぶりだね。今回は南ちゃんが出るからって遠藤さんがね」


烏丸さんは笑顔で握手を交わしながら言う。


「ちょっ!何私のせいにしてんのよ!」


 と動揺した遠藤さんが烏丸さんの頭を叩く。


「えー、だって遠藤さんが運転が面倒だからお願いしてきたんじゃないですか」


「もうそれ以上言うなー!」


「あはは、ほんとに仲がいいですね」


なんだかんだ言って仲の良い2人を見て俺は思わず笑ってしまった。

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