家族勢揃い


 書斎から出てリビングの方へ向かうと廊下でエリーナさんと鉢合う。


「あら京君、どこに行っていたの?」


「父さんに会いに書斎の方へ」


「なるほどね~、もうじきご飯の時間だからリビングに来てって佳代さんが」


「あっ!それなら父さんを呼んできますよ」


「だいじょうぶよ!今、日和が呼びに行ってるから」


「そうですか、ではお言葉に甘えさせてもらいますね」


俺はリビングへと向かい椅子に座る。


しばらくして日和と父さんがリビングに来た。


「ほらほらご飯ができたわよ!運ぶの手伝ってー」


母さんの声がリビングに響き俺と日和は台所へと向かう。


「母さん、どれを持っていけばいいの?」


「そこのテーブルの上にあるやつよ、気をつけてね」


「はいよー」


「あの私は何を?」


「日和ちゃんは飲み物を持っていってもらっていいかしら」


「はい!」


 料理を運び終わりテーブルの上を見渡すとそこには昼食にも関わらず唐揚げに天麩羅、カルボナーラにグラタン、青椒肉絲と言った豪華な食事が並んでいた。


「随分と豪華だね母さん!」


「そりゃあもちろん1年ぶりに息子が帰って来れば当たり前よ!それに正樹さんはいつ呼ばれるかわからないしね」


母さんが右腕を挙げながら答える


「いや、それでもさぁ」


「大丈夫よ、もうじき雄也さんも帰ってくるそうだしね」


「あっそうなの?」


俺の質問に、エリーナさんが答える


「ええ、さっきメールが来たからそのうち来るわよ」


「と言うことでさぁ食べましょ!」


「「「「「いただきます」」」」」


食事が始まり少し経つと玄関が開く音がした。


「ただいまー!」


 と言ってリビングの扉が開き父に似た男性がやってくる。


 この人が日和の父にして俺の叔父の「木村雄也」48歳


 叔父さんは父に似た黒髪と顔立ちだが父に比べると痩せていて、爽やかなイメージを持つ人だ。仕事は外資系企業の会社に勤めていて、アメリカの支社から戻ってきて部長に昇進したそうだ。


「おお!京君じゃないか久しぶりだね!」


「はい!お久しぶりです叔父さん」


「君には日和の事で迷惑をかけてしまい申し訳ないと思っていたんだよ」


「そんな事ないですよ、むしろ日和と食事するのは楽しいですし、料理も作りがいがありますから」


「そう言ってくれるとありがたいよ」


「はい」


「ほらあなた、早く、着替えて来てください」


「ああ、エリーナすまない」


雄也さんはエリーナさんには頭が上がらないのだ


雄也さんがテーブルにつき食事が再開してから父さんが俺に質問をして来た。


「京は、いつまで居られるんだ?」


「取り敢えず、3日間を予定してるよ父さん。でも明日はちょっと予定があって1日中留守にしちゃうけど」


「あらそうなの?なら明後日はご馳走にしなきゃね」


「でも京君、それだと帰りはどうするんだい?行きは日和と一緒にエリーナに迎えに来てもらったんだろ」


「その事なんだけど明日、向こうで知り合った友人を呼びたいんだけどいいかな?帰りはその友人と一緒に帰るから」


俺がそう提案すると両親が泣き出した!


「うおっ!どうしたのいきなり?!」


「違うのよ、京が友達を連れて来てくれるなんて思ってもみなかったからついね・・・」


「ああ、佳代の言った通り不意打ちを喰らってしまったようだ」


「あはは・・・」


俺が呆れているとエリーナさんが


「ねぇ、京君のお友達ってどんな人?」


「えっ!俺の秘密を知ってる唯一の親友ですよ」


「っ!それって大丈夫なの?その・・」


「ああ、問題無いですよ!」


「それなら楽しみだわね、あなた」


「そうだな、京君の友人なら問題ないだろう。ところで日和は知っているのか?」


「はいお父様、私も会った事ありますよ。とてもいい人です!でもきっと驚くと思いますよ!」


「それは楽しみだな」


 その後父さんは急な呼び出しがあり仕事へ行ってしまったが俺は叔父さんと将棋を指しながら話しをしている。


「ふむ、強くなったな京君、前はもっと簡単に勝てたんだけどなー」


「あはは、流石に4年以上前の俺と比べられても・・・」


「そうだったな、それにしても正樹からあの事を聞いた時は心配したがこうして元気な姿を見れて良かったよ」


「そうですね、4年前の見送りの時はあの事の前でしたからね」


「それもそうだが、正樹から君の事を電話で聞いていたんだよ。当時の君の事を話す正樹はいつも声に生気がなく悲嘆に満ちていたが、君が高校3年の時ぐらいからようやく正樹らしい声に戻っていたよ」


「確かに、高3の時に初めて歌を載せてから俺も体調が良くなりましたしね」


「・・・最初は日和を君に合わせるべきか迷っていたんだよ」


「えっ?」


「君がようやく立ち直りだしたのに身近に女性がいて大丈夫かと心配してたんだよ。正樹とも何度も相談してね、そしたら正樹が「いい機会だから日和ちゃんの面倒をみせてやればいいんじゃないか?」ってね」


「えー、それはまぁ何というか・・・すいません」


「いやいや、謝ることはないよ!むしろ助かってるんだから。あのままだと日和は今の高校より下の高校に入らないといけなかったからね。これからも日和のことを頼むよ」


「任せてください」


「よろしく頼むよって!ちょっと待ってくれ!」


「待ては無しですよ、雄也さん」


「クッ!やられたよ。ハッハッハッハ」


「ふふふ」


それからも俺と雄也さんは遅くまで将棋を指した。

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