第三章 帰省と大会とご褒美
師範からの相談事
波乱の4月が終わり5月に入った。
待ちに待ったGWを来週に控え、俺は久しぶりに道場へと来ている。
いつものように南ちゃんと試合をして(やっぱり勝てない)東子ちゃんや緑川さんと談笑した後、帰りがけに珍しく師範から声をかけられた。
「おつかれ木村君、済まないがちょっといいかな?」
「はい大丈夫ですよ」
「ありがとう、実は折り入って頼みがあるんだよ」
「? 何でしょうか? 師範が自分に頼み事なんて珍しいですね」
「実は今度、東京で開かれる大会があるんだけど、その大会に今回は南も出るんだ。だからぜひ君にも応援に来て欲しいんだよ」
「……えーと、今度の大会って確か毎年やってる結構大きな大会ですね? オリンピック選手とかもエントリーしている。それに師範代も出るんですか! あの人、大会は出ないって言っていたのに?」
「ああ、今年は珍しく予定が無いらしくてこの前突然言い出したんだよ、全く我が娘ながら困らされる。ハッハッハッ!」
「……分かりました。自分で良ければ応援に行かせていただきます。ところで日程はいつなんですか?」
「GW2日目だから来週の火曜日だね。会場は東京の国技館だけど大丈夫かい?」
「はい、自分もGWは実家の方へ帰省しようと考えていましたし、電車ですぐですから」
「そう言えば君のご実家は確か東京だったね。私たちは前日に東京のホテルの方に泊まるから、何かあったら連絡をしてくれ」
「わかりました。では当日、会場の方でお会いしましょう」
「急な頼みを受けてくれてすまないね。でも木村君が来てくれるなら、ムラっけのある南も大丈夫だろう。なんせ唯一の思い人なんだから」
「? 何のことですか?」
「ああ、気にしなくていいよ! こっちの話だから」
「では師範、自分はこの辺で失礼します」
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
俺は師範に挨拶をして道場を出る。
「それにしても、あの南ちゃんが大会にねぇ……大丈夫かなぁ? やっべ、今から心配になってきた」
俺は南ちゃんの心配をしながらバイクを運転する。
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