本当の私


続きです。





翌日

 学校へ行くと、普段は一切話さないクラスの女子が話しかけてきた。


「ねぇ葵さん、何かあった?」


「えっ? どうしてそう思うのかしら?」 


「いや、いつもと違ってなんだが雰囲気が柔らかいと言うか、昨日までは纏っていた空気が怖くて近寄り難かったけど、今日は穏やかな感じなんだよね……」


「そうかしら? いつもと変わらないと思うのだけど?」


「全然ちがうよ。あはは、葵さんって実は面白い人だね! ねぇお友達にならない?」


「……構わないわよ。こちらこそお願いするわ。・・・これもキム兄のおかげだね」


「? 最後なんて言ったの葵さん」


「何でもないわ」


 こうして私に、高校2年にして初めて友達ができたこの日は一生忘れられない大切な日となった。


 それもこれもキム兄のおかげだ。


 そして私がキム兄の事が好きだと改めて再確認した日でもあった。



 その後、私に友達ができた事で私のイメージが変わり更に友達も増えていき、今では生徒会長にまでなる事が出来た。


 3年生に上り生徒会長としての仕事に、友達関係、そして受験のせいで多忙を極める私だがなるべく道場の方には顔を出す様にしている。


 キム兄にはよく勉強しろと言われるけど、私としてはキム兄に会えない方がストレスが溜まって勉強が全然進まないので仕方ない。


(自分でも思うけど、私どんなけキム兄の事が好きなの)


 と思ってしまう事もあるが、それでもキム兄の事が好きなのは事実なのでどうしようもないと、今では割り切っている。



 そんなある日、同じ音羽4姫(周りが勝手に呼んでいる)の1人で2年生の「緑川芽依」ちゃんが私の元にきた。


  芽依ちゃんとは去年の学園祭から仲良くなり、たまに遊びに行く事もある程の仲でよく相談ごと(恋愛に関する)をされるが!今回はその手の話じゃなかった。


「すいません葵先輩、実はお願いがあるんです」


「何かしら? 私に出来る事なら協力するわよ」


「葵先輩のご実家は道場を経営しているんですよね」


「ええ、そうよ」


「それで私もその道場に通うことは出来ませんか?」


「構わないわよ、元々うちの流派は女性でも強くなれるがもっとうだから。でも急にこんな事を言い出すなんて何があったのかしら?」


  すると芽依ちゃんは顔を赤くしながら話し始めた。


「はい、この間駅に向かう途中で数人の大学生位の人達に絡まれまして、私怖くなって何も喋れなくて、それで腕を掴まれた時に同じ大学生位の眼鏡をかけた人が私を助けてくれてそれで代わりにその人がどこかへ連れて行かれてしまったんです」


「それでその人はどうなったの?」


 話し始めてから次第に表情が暗くなっていくが、その後の事を話しだすと今度は急に大声をだして話しだした。


「それで私、その人たちの後をついて行ったんです。そしたら助けてくれた人が相手を全員倒していたんです!!」


「へぇ~その人なかなかやるわね」


「はい、しかも相手は4人いて全員が凄く大きい人達だったんですよ! それをたった1人でしかもその人、相手よりも小柄な人なのにですよ! それで私もあの人みたいになりたいなと思いまして・・・ダメでしょうか?」


「全然そんな事ないわよ。憧れの人の様になりたいと言う理由は素晴らしいと思うわ」


「ありがとうございます!」


「それで、いつ頃から道場に来るかしら? 今週は明日と週末が稽古日なのだけど?」


「葵先輩にお任せします。送り迎えは母がしてくれるそうなのでいつでも大丈夫です」


「それなら明日の18時からで良いかしら? 道着はその日に採寸して頼めばいいし、その間は私のお古を来てもらえれば稽古にも参加できるしね」


「よろしくお願いします」


「こちらこそよろしくね」




次の日


夜6時前、早めにきていた芽依ちゃんに稽古で使う道着の採寸を済ませ、私の道着を貸した後、父と一緒に道場に向かう。


  するとなんだが道場の方がやたらと騒がしい。一体なんだろうと思ったが、直ぐに私と父は理由が分かった。


(もしかして!)


と、胸を高鳴らせながら私は道場へと行く。


するとそこには、畳の上に大の字で寝ているキム兄と、それを見下ろす南姉さんがいた。


 どうやら2人で試合をしていたらしく今回も南姉さんが勝った様だ。


  稽古が始まった後、私は芽依ちゃんと準備運動をしてから葵流の基本の型を教え休憩がてら私はキム兄の元へと行った。


  いつものように軽い挨拶をしてから芽依ちゃんを紹介して私は父の元へと行く。

 するとどうやらさっきの試合を見て感激した芽依ちゃんがキム兄と話し始めた。


  しばらくしてキム兄たちの方へと行くとキム兄からいきなり氷姫と呼ばれて驚いてしまった。どうやら芽依ちゃんがバラした様なので私も芽依ちゃんのあだ名である舞姫を教えてあげた。


 その後稽古が終わりキム兄がうちに晩ご飯を食べにきた。


 私はいつも着ている部屋着じゃなくて外用の服に急いで着替えてからテーブルに座る。


 キム兄の席はいつも私の隣なので落ち着いて食事が出来ない。


 食事が終わりキム兄が帰ると私は芽依ちゃんにRINEを送る。


【東子 初稽古の今日はどうだった?】


【芽依 凄く楽しかったです! 後、東子先輩があんな風に喋るの初めて見ました。】


 今日1番のミスはいつものようにキム兄と話した事だと分かってはいるがそれでも改めて言われると恥ずかしい。


【東子 あはは、内緒にしてね】


【芽依 はい、私だけの秘密ですね】


【東子 ありがとう。それじゃあまたね】


【芽依 わかりました。また明日学校で】


 芽依ちゃんが道場に通うになってから私も通う頻度が増えていったがキム兄は気まぐれで週2から3回くらいしか来ないので少し残念。


 それでもキム兄がいる日は芽依ちゃんと共に世間話や稽古に試合をしたりとしていく。


 しばらくすると芽依ちゃんがキム兄を見ると少し顔が赤くなり、少し前とは違った表情をするようになった。私はそんな芽依の表情や視線になんだが覚えがあった。


(あっこれ、私と同じじゃない?)


 私は芽依ちゃんの気持ちに気づいてから少し焦るようになった。


 けどあれだけ私がアプローチをしてるのに全然反応しないキム兄って何なの?


 でも前にキム兄に、恋人について聞いたけどそんな人はいないと言っていたし、これからはもっと頑張るしかないよね!


 それに最近南姉さんや芽依ちゃんがちょっと怪しい行動をとり始めてきたのでそれにも注意しないといけないし!


私、頑張る!

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