1番大切な事は・・・


翌日


 いつもの陰キャ姿で最寄駅の近くにある行きつけのカフェに来ていた。

 何故、陰キャの姿で会うのかと言うと『助さん』の正体を隠す以外にも理由がある。


「あと5分位で約束の時間だな」


 ミルクティーを飲みながら腕時計を見て時間を確認する。すると、入り口付近に1人の女性が入ってくる。


 銀髪ショートの髪を靡かせ整った容姿と抜群のプロポーションに人を惹きつけるオーラを纏い10人中10人が美女と呼ぶほどの女性だ。


(マジか、写真は見たけど実物は半端ないな!やべー帰りてー)


「いらっしゃいませー、お一人様でしょうか?」


 と店員が聞くと


「いえ、待ち合わせです」


 と言って辺りを見回してから俺の座っているテーブルの方にくる。


「すみませんが、その帽子とパソコン、もしかして貴方が『助さん』ですか?」


 と、真白さんは聞いてくる。


 俺は約束をする時に、目印として事前に自分の格好などを伝えていた。


「は、はい、」


 俺はいつの様にたどたどしく返事をする。


 俺が答えた後、真白さんは俺の向かい側の椅子に座ると軽く会釈をしてから、


「初めまして、ご存知かと思いますが私は真白三葉と申します。今日はお会いしていただきありがとうございます」


 とていねい口調で挨拶をしてくる。


「い、いえ、こちらこそ急にお、お呼びしてしまい申し訳ございません。そ、それではこれから、いくつか質問させて頂きます」


「はい、よろしくお願いします」


 その後、幾つかの質問をしてから俺は1番重要な最後の質問をする。


「それでは最後に真白さんが目指してる目標はなんですか?」


 と質問する。この質問は俺が曲を提供するにあたって1番大事な質問だ。今までこの質問に対して俺を満足できる回答をしたのはリューだけだ。


俺の質問に真白さんは暫く考えてから


「私は1番になりたいです!中森明菜や安室奈美恵や宇多田ヒカルの様に、1人で武道館を満員にできる歌手になりたいです」


真剣な顔で話す真白さんを見て俺は笑ってしまった。


「・・・合格です真白さん!貴女は満点の回答をしました。俺の曲で良ければ使って下さい」


「えっ!?良いんですか?」


「勿論ですよ!まず貴女は俺の姿を見ても表情を変えなかった。今まで会った人のほとんどが俺を見て表情を変えてましたから!むしろ、貴女の様な人に俺の曲を歌って貰いたいくらいですよ!」


「たったそれだけで、ですか?」


「ええ、それだけの事でも人を知るのには充分ですからね。だから俺は貴女に曲を提供しようと思ったんですよ」


「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」


 と言って何度も頭を下げてくる。俺はこの前アップした新曲[残響]の音源と歌詞を渡して帰るために荷物を片付けようとしたら真白さんが


「あのっ!是非お礼をしたいのですが実はお金が・・・」


 と言い切る前に俺は手を前に出してから


「これはあくまで趣味でやっている事なのでお礼は受け取らない事にしてるので」


「でも、それじゃ私が納得できないんです!」


「うーん、それなら絶対に人気になって下さいね」


 と言って俺はカフェをでてマンションへと戻る。


 数日後


 真白さんがデビュー曲[残響]を発売し、その美しい歌声で瞬く間に人気になり鮮烈デビューを果たした。

 その後俺の動画サイトの登録数と閲覧数が増えたのは言うまでもなかった。


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