唯一の親友
俺は大学進学を機に大学近くの1LDKのマンションに一人暮らしをしている。
一人暮らしなのにその部屋は広すぎるなのでは? と思うかもしれないが、ひと部屋丸々俺の趣味部屋としているうえ、キッチンも俺仕様に改造をしているので、実際まともに使えるのはリビングとダイニング位なのである。
朝6時、いつもの様にスマホのアラームで起きてから朝食を作るためにキッチンに向かいながら、リビングのソファーに寝ている黒髪短髪のイケメンを叩き起こす。
「ほらリュー! 朝だからはやく起きろ」
「うーん、後5分だけ・・・」
「ダメに決まってんだろが! お前は休みでも俺は大学だ!」
「わかったよキョー、今起きるよ」
「分かればよろしい! 早く顔洗って着替えてきな」
「ハイよ」
俺はキッチンへと行き朝飯を作る。
今日の献立はご飯に味噌汁、ベーコンエッグとほうれん草のおひたしに、昨日の余りの鳥の唐揚げだ。
俺が朝食を作り終わると身支度を整えたイケメンが椅子に座りコーヒーを飲みながら雑誌を読んでいた。
カップを持ちながら雑誌を読んでいるだけでも、やはりイケメンは絵になる。
今更だが、こいつ名前は「氷室龍一」
俺と同い年の19歳だ。
有名歌手の息子で日本一のアイドルグループ[RIZIN]不動のセンターを務める正真正銘のイケメンだ! 最近ではソロ活動を始めて更に人気に火がついた。
そんな明らかに陽キャなリア充が何故俺のような陰キャの部屋にいるのか? と言うと、俺が趣味でやっている動画サイトに関係しているのだがまぁいいか。
「それにしても相変わらずキョーの作る飯は美味いな!」
「当たり前だのクラッカーだわ」
「・・・お前だいぶ古いなそれ、まあいいけどさ。それにしても、この間アップしたやつがもう300万回再生超えてるぞ! 流石は謎の大人気作曲家『助さん』だな。はっはっはっ!」
「……へぇ。あの曲、もうそんなにいったのか? あの曲は男が歌うよりも女性が歌う方が良い曲だと思ってたからビックリだわ」
「なぁ、キョーはもう曲を提供したりしないのか?」
「・・・・ああ面倒いしな。余程の逸材じゃなければ、無いかな。それこそ、お前くらいの……」
「そっか」
俺は趣味で動画サイトに『助さん』と言う名で自分で作詞作曲した曲を歌いアップしている。高校3年の時に初めて曲をアップしてから人気になり今では10曲程アップし、全て300万回再生を超えている程で、俺はその広告料などで懐事情はそれなりに温かい。
リューとは去年の夏頃に[signal]と言う曲をアップしてから楽曲提供して欲しいと何度もラヴコールを受け仕方なく楽曲提供した事で知り合い、この曲でリューはソロデビューしてすぐ賞を取った。
それから俺とリューは仲良くなり、更にお互いに共通の趣味があったので更に仲良くなり、こうして俺の部屋にちょくちょく遊びに来ている。
朝食を食べ終え後、身支度を済ませた俺にリューがソファに寝っ転がりながら、
「それにしてもキョー、またその格好で大学へ行くのか? お前普通にカッコいいんだから余計なことしなきゃいいのに」
と、聞いてくる。
まぁ確かに、今の俺の格好は明らかに『ザ・陰キャ』なので仕方ないのだが。
「いいんだよ別に。この格好の方が人と関わらなくても済むだろ? それに俺が『助さん』だって知られたくないしな」
「……まぁ、キョーがいいならいいんだけどさ。あっそうだ! 話は変わるんだけど、実はうちのマネージャーから今度デビューする子に、楽曲提供して欲しいってメールが来たんだけどどうする?」
「またかよ。今日は夕方に帰ってくるから、取り敢えずいつも通り、その子の歌声が入ってるデモテープと資料をくれ! 面接はそれ次第かな?」
「オッケー! 夕方までには用意しとくわ!」
「言っとくけど、“お前の頼みってことで”、しょうがなくだからな!」
「分かってるって、今度飯奢るからさ」
「寿々苑の焼肉な!」
「おっ前それ、普通に諭吉が飛ぶじゃねーかよ!」
「ハッハッハッ!! それじゃあ行ってくるから後は宜しく! あーそれと、昼飯は弁当を作っといたからそれ食ってくれ」
「サンキュー!いってら」
リューにそう言って、俺は大学へと向かった。
*******
その夜。
マンションに帰って来た俺は、リューから資料をもらい一通り目を通してから音源テープを聴く。
すると少し聴いただけで全身の産毛が逆立ち鳥肌がおさまらなかった。
「やべーなこの子、名前なんて言ったっけかな?」
久しぶりの金の卵にテンションを上げた俺は、慌てて資料を手に取り名前を確認する
『真白 三葉』 18歳
と書かれており今年大学1年になる事まで書いてあった。
しばらく考えてから
「うーん、後はまぁ会ってみて決めるかな」
そう決めた俺は、リューに連絡を入れ明日会ってみる事にした。
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