伍
フェリヤは、わたしと
わたし……というよりは、姫の方のわたしの護衛役を命じられた。
無責任とも思える行動は、
フェリヤを除いた魔導師とキャムロルと名乗った王子の四人が、仔細を述べることもなく、フェリヤを置いて、静かに暗闇へと消えてしまったことだ。
足音もなく、吸い込まれるように。
それは、少し恐ろしい光景であった。
ユリのもとに一人取り残されたフェリヤは、気が進まないといった表情をしていた。
向けられた嫌悪は、何に対して?
護衛という役に対して?
わたし、ユリに対して?
姫に対して?
それとも、あの魔導師や王子に対して?
ユリの中で、再び疑問が渦巻いていく。
その時、
ユリの中に、声が届いた。
誰かの、声。
男の人の声。
わたしではない、誰かの声。
心の、声?
これは、フェリヤの声?
ユリの隣に腰を下ろしたフェリヤの表情から、
聞こえてくる声が訴えることから、
おそらく、フェリヤのものであろうと、推測する。
だけれど、
何故、わたしに、フェリヤの心の声が聞こえるのだろう?
もしかして?
ユリにはひとつの推論が浮かんだ。
でも、
そんなこと、あり得ない。
あり得ない、けど。
でも……
ユリの困惑は続く。
そして、
思う。
それは、普通では、あり得ないこと。
でも、
ここは普通ではなさそうだから。
わたし自身も、普通ではなくなってきているみたいだから。
もしかしたら。
もしかしたら、そうなのかもしれない。
うん。きっと、そうだと思う。
ユリは、自分で見つけた答えに確信をもつ。
それは……
きっと、わたしが知りたいと思ったから。
ユリが、否、姫が、
フェリヤがどう思ってるかを知りたがっていたから。
わたしの――姫の、護衛に命ぜられたことを、
フェリヤがどう思っているか、
知りたいと思ったから。
だとすると……
ユリは、とても、悲しくなった。
淋しくなった。
何故だか、分からないけれど。
さっきから、ずっと、分からないこと、だらけ、だけど。
心にぽっかりと穴が開いた感じ。
本当に、そんな感じだった。
そして、
その穴を、もう一人のわたし……ユリではなく、姫が、
埋めていく。
取り除いていく。
消していく。
これは、何?
この、淋しさは、何?
淋しいのは、誰?
もしかして、泣いているの?
誰?
これが、目覚め?
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