フェリヤは、わたしと年齢としが近いからという理由で、

 わたし……というよりは、姫の方のわたしの護衛役を命じられた。

 無責任とも思える行動は、

 フェリヤを除いた魔導師とキャムロルと名乗った王子の四人が、仔細を述べることもなく、フェリヤを置いて、静かに暗闇へと消えてしまったことだ。

 足音もなく、吸い込まれるように。

 それは、少し恐ろしい光景であった。

 ユリのもとに一人取り残されたフェリヤは、気が進まないといった表情をしていた。

 向けられた嫌悪は、何に対して?

 護衛という役に対して?

 わたし、ユリに対して?

 姫に対して?

 それとも、あの魔導師や王子に対して?


 ユリの中で、再び疑問が渦巻いていく。


 その時、

 ユリの中に、声が届いた。

 誰かの、声。

 男の人の声。

 わたしではない、誰かの声。

 心の、声?


 これは、フェリヤの声?

 

 ユリの隣に腰を下ろしたフェリヤの表情から、

 聞こえてくる声が訴えることから、

 おそらく、フェリヤのものであろうと、推測する。

 だけれど、

 何故、わたしに、フェリヤの心の声が聞こえるのだろう?


 もしかして?

 ユリにはひとつの推論が浮かんだ。

 でも、

 そんなこと、あり得ない。

 あり得ない、けど。

 でも……

 ユリの困惑は続く。

 そして、

 思う。

 それは、普通では、あり得ないこと。

 でも、

 は普通ではなさそうだから。

 自身も、ではなくなってきているみたいだから。

 もしかしたら。

 もしかしたら、なのかもしれない。

 うん。きっと、そうだと思う。

 ユリは、自分で見つけた答えに確信をもつ。

 それは……

 きっと、が知りたいと思ったから。

 ユリが、否、

 フェリヤがどう思ってるかを知りたがっていたから。

 わたしの――姫の、護衛に命ぜられたことを、

 フェリヤがどう思っているか、

 知りたいと思ったから。


 だとすると……

 ユリは、とても、悲しくなった。

 淋しくなった。

 何故だか、分からないけれど。

 さっきから、ずっと、分からないこと、だらけ、だけど。

 

 心にぽっかりと穴が開いた感じ。

 本当に、そんな感じだった。


 そして、

 その穴を、もう一人のわたし……ユリではなく、姫が、

 埋めていく。

 取り除いていく。

 消していく。

 これは、何?

  

 この、淋しさは、何?

 淋しいのは、誰?

 もしかして、泣いているの?

 誰?

 

 これが、目覚め?

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