伍(2)

「……何ですか?」

 最初は、音にならなかった。

「目覚めって、何ですか?」

淋しさよりも、恐ろしさが広がっていく。

もう一人のわたし――姫が、ユリに抵抗する。

それに抗いながら、ユリは、声にする。

言葉が音になる。

瞳から雫が、流れ落ちる。

フェリヤが雫に気付いて、驚いている。

フェリヤの瞳が揺れる。迷う。戸惑う。


教えて。

教えて、フェリヤ。

お願い。


それは、誰の声だったのだろう。

誰の思いだったのだろう。

わたしの? 姫の?

どちらの叫びだったのだろう?

声にはならなかったけど。

フェリヤには届いただろうか。

わたしは……ユリは、姫は、訴える。


フェリヤの声が、わたしに届いたというのなら、

わたしの声も、フェリヤに届いたはず。


お願い……


フェリヤ、がどうして泣いているのか、

瞳からこぼれる雫の意味を分かって。


それは、姫の願いのようで。

切なくて。

悲しくて。

苦しくて。


溢れる雫が、わたしの頬を伝っていった。

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