伍(2)
「……何ですか?」
最初は、音にならなかった。
「目覚めって、何ですか?」
淋しさよりも、恐ろしさが広がっていく。
もう一人のわたし――姫が、ユリに抵抗する。
それに抗いながら、ユリは、声にする。
言葉が音になる。
瞳から雫が、流れ落ちる。
フェリヤが雫に気付いて、驚いている。
フェリヤの瞳が揺れる。迷う。戸惑う。
教えて。
教えて、フェリヤ。
お願い。
それは、誰の声だったのだろう。
誰の思いだったのだろう。
わたしの? 姫の?
どちらの叫びだったのだろう?
声にはならなかったけど。
フェリヤには届いただろうか。
わたしは……ユリは、姫は、訴える。
フェリヤの声が、わたしに届いたというのなら、
わたしの声も、フェリヤに届いたはず。
お願い……
フェリヤ、わたしがどうして泣いているのか、
瞳からこぼれる雫の意味を分かって。
それは、姫の願いのようで。
切なくて。
悲しくて。
苦しくて。
溢れる雫が、わたしの頬を伝っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます