八 …二
「ここで何してる?」
五条はただ淡々と、赤坂に向かって問いただした。
赤坂は身を丸く屈め、視線を下へと下げたまま弱弱しく答える。
「もう……嫌なんだ……」
五条の質問に対して、あまりにも見当外れな答え。
しかし、そのことには気にも留めずに、五条は平然としてもう一度赤坂に問いただす。
「何が、嫌なんだ?」
五条の問いに、今度ははっきりと、的確に赤坂は答えた。
屈めていた身をゆっくりと起こし、俯いたまま五条の前に立ちはだかる。
しかし、取り纏っていた雰囲気は、先程までの弱弱しいものから一変した。
ピリッとした空気が、五条と赤坂の間に走る。ゆっくりと顔を上げた赤坂の白目は赤く変色し、血の涙を流しながら片方の口元を吊り上がらせ、不気味に笑みを浮かべている。
その姿はまるで、奇怪な道化のようだった。
「生きていることが……死にたい」
そう言った刹那、おどろおどろしい程の空気が、赤坂を包み込んでゆく。
ナニカに憑依されたかのように、呻いていた赤坂が奇怪な叫び声を挙げ、五条の首を絞めようと手を伸ばす。
ひやりとした赤坂の両手が五条に触れ、次第に首全体を包み込んだ。
一方の五条は表情一つ変えずに、その光景を黙って見ているだけ。
「ひゃあはははは‼ お前を取り込んでやるゥゥ…」
赤坂のものとは思えないの声帯で叫び、五条の首をきつく締めあげてゆく様を、五条はどこか他人行儀で見つめる。
ついに喉にかかった親指にギリ……と力が入りそうになったその時、五条はポツリと呟いた。
「それを、お前の妹が望んでいないとしてもか」
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