七 …三
車は束の間のドライブの後、広々とした駐車場に停車した。
すぐそばに立ってある看板には【五条神社関係者専用駐車場】と書かれている。
ここは、五条の実家、五条神社が所有する駐車場だ。
黒いバン以外に車は停まっていないため、他の神社関係者は出払っているということになる。
「さて、着いたよ」
乙女は手錠で繋がれている赤坂側のスライドドアを開け、降りるように催促する。赤坂は少し戸惑った表情を見せた後、言われた通りに車を降りる。赤坂が下りたと同時に反対側で体を倒していた五条も目を覚ました。
ボーッと車外の景色を見た後、あからさまに眉間に皺を寄せて渋い表情を浮かべた。
本人としては、用がなければあまり近寄りたくもない場所だろう。しぶしぶといった様子で車を降り、さっさと敷地内へ歩みを進める。
赤坂を引き連れながら、乙女もその後に続く。いつにも増して、酷く緊張感が漂っていると感じる。駐車場を抜け、敷地内に足を踏み入れた直後、ピリッと肌に電流が走ったような気さえした。
「そいつのせいで精霊たちが騒いでる」
乙女の様子を察してか、五条が言った。
“そいつ”とは、乙女の後ろからついてきている赤坂のことだろう。
今は大人しいものの、赤坂に憑りついている【憑物】に反応して、精霊たちがざわついているらしい。実際、そんなに風が強いわけでもないのに、先程からザァザァと木々が揺らめいてやけに耳に残った。
「精霊様たちは、なんて?」
乙女に問われた五条は、少しの沈黙の後、手のひらを胸の前に掲げ、やけに寂しそうな様子でうつむきながらポツリと呟いた。
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