七 …一
生い茂った草木をガサガサと掻き分け、先を急ぐように進んでゆく足音が二つ。裏門を抜け、コンクリートが広がる駐車場へ出た直後、門から一番奥に停められていた黒いバンからクラクションが鳴らされた。
エンジンをつける音が聞こえたかと思えば、黒いバンはそのまま二人の方へゆっくりと近づいてくる。
「意外と早かったね」
ウィンドウを下げて顔を出したのは、ついさっきまで煙草を吸っていたのか、キシリトールをふんだんに含んだガムを噛んでいる乙女だった。スーッとした香りが鼻を通り抜けて、そのまま喉へと到達する。少し五条が顔をしかめた様子を見て、乙女はクスクスと笑いを零した。
そして、ちらりと横を見やった後、手元のスイッチを操り、後部座席スライド式のドアを開ける。
「彼が赤坂正人?」
五条と赤坂と思わしき青年が乗ったところを確認して、乙女は運転席から後部座席へと身を乗り出す。少しげんなりとした様子で、五条は車に乗せられていた手錠を赤坂の手首に掛けた。少し時間が経ち、落ち着きを取り戻したのか、赤坂はされるがままに頭を垂れているだけ。
「彼、随分と大人しいね」
「さっきちょっと干渉した」
ぶっきらぼうに言う五条に、乙女は「なるほど」と意味ありげな笑みを浮かべて、車を発進させた。
干渉。すなわち、この青年の精神世界に入り込んだということ。
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