四 …二
「そんなに大層なことじゃないよ。 それにほら、私の所は他の神社よりもこじんまりとしてるし」
これは謙遜でもなんでもなく、ただの事実だ。
都内の少し入り込んだところにある、小さな神社。なんで東京十社という大それたものに指定されているのか、私には不思議なくらいだ。
鳥居をくぐった僅か数十歩先にお賽銭箱があるような、観光する場所なんて特にないような所で、個人で切り盛りしている。 政府からの協力金がなければ、とっくに潰れているんじゃないだろうか。
「そんなことありません‼ ご神格はあの
春香は、胸の前でぎゅっと握りこぶしを二つ作り、ズンっとみことに歩み寄る。小柄ながらにその迫力はとても凄まじい。
「それに、みことさんは年末年始に毎年神楽を神々に捧げている巫女。まさに本物‼ いつもの神社のようにまではいかなくても、みことさんが集中して神様へ舞を捧げられるように、今日は誠心誠意みことさんに尽くしますので!」
吸い込んだ息を思いっきりその言葉に乗せるように、春香はまた一歩、前のめりになってみことに進言する。
勢いに呑まれかけていたみことは、軽く咳ばらいをして春香に落ち着くように伝えた。
「こほん……ありがとう、すっごく心強い。 ただね」
みことは、ちらりと春香の目を見た後、自身の足元に視線を落とした。
「踏んでる、足」
みことの一言で、春香はゆっくりと足元に視線を落とす。前のめりになりすぎた結果、春香も気づかぬうちに近寄りすぎていたのだろう。足元を見ると、みことが履いている真っ白な足袋を自分の足が思いっきり踏んづけていた。あまりにも前のめりに体重をかけているせいで、足を踏まれているみことの顔が、痛みで若干引き攣っている。
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