三 …三

「彼女たちはよかったんですか?」


 先生が走ってきたその背後で、じとりとこちらを見ている女生徒たち。その視線から逃れようと先生を盾にする。先生と親密な関係になろうとする学生が多いせいで、私たちの面倒を見てくれている先生との距離感を見計らっているこちらの気苦労も絶えない。そんなに先生と一緒に居たいなら、いっそ部員ぎりぎりの我が神楽同好会に入ってくれとさえ思うが、神聖な神殿に、そんなよこしまな気持ちで立ち入ってほしくはないというのが本音だ。


「はは、君を待っている間に捕まってしまってね」


 そう言ってニコリと微笑む石井先生。ああ……この笑顔に、何人の女の子が彼に落とされてしまったんだろう……罪な男め。と、みことは心の中で静かに毒づく。


「それで、わざわざこんな時間に呼び出して、どうしたんですか?」


 少し棘のある私の言い草をさして気にも留めずに、「あ、そうだ」と思い出したかのように、ポケットに忍ばせていた一枚の写真を差し出してきた。


「この写真の人を見かけたら、僕に教えてくれるかい? 恐らく神楽を見に来ると言っていたから、神楽の時間になったら会場に現れると思う。 僕の名前を出せば、きっと察してくれるから」


 そう言って、一枚の写真を渡された。写真に写っていたのは、今よりほんの少し幼さを覚える先生と、中性的な見た目をした、ショートヘアの人物。


「え、この人って、女性? それとも男性?」


 まじまじと、写真を見る。しかし、纏っている衣服はどちらの性別とも見て取れる恰好をしていて、いささか判別がつかない。二人は、絶妙な距離感を保って写真に写っていることもあり、そんなに親しくはない間柄、それともどこか遠慮しているのか。 写真に対してそんな違和感を覚えた。


「さて、どちらだろうね?」


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