三 …二
「大丈夫よ。 丁度精神統一をしていたところだったから、周囲の気配に疎かになってただけ」
そう言って、にこりと春香に微笑んで見せる。春香は微かに頬を赤らめ、こちらに向かって控えめな笑顔を向けた。本当に小動物みたいで、女から見ても、守りたくなるくらい可愛い。
「あの、石井(いしい)先生が呼んでます……」
そう言いながら、キャンパス塔の本館を指さす春香。
校内道中までそんなに時間がないにも関わらず、わざわざ職員室まで呼ぼうなんて……しょうもない内容だったらさっさと戻ってやるんだから。
伝えに来てくれた春香に「ありがとう」と一言伝え、職員室のある本館へ向かう。神殿を出ると、開会から数時間が経過するため、すでに敷地内にはかなりの一般客がいた。
巫女姿はよほど珍しいのか、じろじろと視線を向けられ、みことは自分の頬が赤くなるのを感じる。早く人気のない所へ、と早歩きで本館へ向かうものの、人込みでなかなか前に進むことが出来ないからもどかしい。
ようやく人込みから抜け、本館の玄関先へと到着する。そこには、外で私が到着するのをわざわざ外で待っていてくれたのか、石井先生が女生徒に囲まれながら立っていた。
私が好奇の目に晒されているにも関わらず、この先生はハーレム状態だったのか……と思うと、腹の底に怒りが湧いてくる。
「あ、三条!」
私を見つけた石井先生は、周りの女生徒に何かを告げると、そのまま私の元へと駆け寄ってきた。駆け寄る姿はまるで飼い主を見つけた子犬のようで、なんとなく文句を言う気力を失ってしまう。
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