Final ──決勝──
ヴァイオレットガールは会心の雄叫び。チームヴァイオレットのメンバーたちもガッツポーズして喜ぶ。
連続S字区間をクリアしたとき、先頭はヴァイオレットガールになり。フィチ、龍一と続く。
「しっかりなさい! レースにレディーファーストはないのよ」
ソキョンはフィチを叱咤する。自分とこの選手が表彰式でキャンペーンガールならぬキャンペーンガイよろしく優勝者となった少女を挟むのは、勝負の世界で生きる身としては悔しい限り。
「悪いなフィチ……」
龍一はぽそっとつぶやき、フィチに張り付く。最終コーナーでインをうかがう。しかしフィチも用心し、ラインを塞ぐ。だがそれも想定内だ。
最終コーナーを抜けた。メインストレート、加速。モーター音が唸る。スリップストリームに入る、スピードが乗る。
フィチのマシンがヴァイオレットガールのマシンを、龍一のマシンがフィチのマシンを、追い越そうとして。3台並んで、第1コーナーに突入する。
イン側から龍一、フィチ、ヴァイオレットガールと並ぶ。このままいけば龍一がトップに立ちそうだが……。
一番アウト側のバイオレットガールは、タイヤをスライドさせほぼドリフト状態でコーナーを駆け、頭一つ抜け出す。
悪辣だが正確無比のコントロールをするAIのように。
「なんてコだ」
フィチも龍一も唸らされた。ヴァイオレットガールはアウト側にいながらトップを死守し、第2コーナーに龍一とフィチを引き連れて飛び込んだ。
龍一はフィチを抜けた。が、やった、と思うよりもヴァイオレットガールの走りに思わず圧倒させられてしまった。
「あと1週半……」
「勝つのよ、下手に安全策とっちゃだめよ」
優佳とソキョンもディスプレイを眺め唸るように言う。胃がキリキリし、心臓の鼓動が大きく速くなる。
早く終わってほしいような、でも終わってほしくないような……。
なんだかんだで、こんなレース状況の中にいられるのが一番の幸せだった。
このままループしてもいいような気もするが。
「それじゃ勝てないでしょ!」
ひたりそうな自分に戒めるようにソキョンは言い聞かせる。
ウィングタイガーのワン・ツーフィニッシュ! それが出来れば言うことなしなのだが。
連続S字区間を抜け、次の右直角、その次の右直角の最終コーナーまで、変動なし。
最終コーナーを抜け、メインストレートに入る。加速する。モーター音が唸る。ラインを超える。
ラストラップに入る。
ヴァイオレットガールがトップ、龍一とフィチが追走する。
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