Final ──決勝──
「やるわねえ」
ソキョンはにこにこ笑顔だ。勝ちに餓えてきたと。
「あっ」
龍一は変な声が出た。前車がアンダーステア(曲がらない)を発生させ、コーナーを大きく膨らみ、スピードを落としてしまう。その隙に、インからさっと抜き去る。
(上手くいったというべきか……)
前車は焦りから操作をミスしてアンダーステアを出してしまった。接触はされていない。もし接触の上でのアンダーステアであれば、すぐに審査員から何かしらの指摘が飛んできただろうが。
何の指摘もないので、大丈夫のようだ。
実況と解説は龍一の順位アップを興奮気味に伝える。チャットも盛り上がっている。
「チームオーダーがないからって張り合いすぎてダブルクラッシュだけは勘弁してね!」
「いやまだ気が早いですよ」
ソキョンも興奮し、スタッフが苦笑しながら諫める。
「10番手スタートのドラゴンですが、なんとあれよあれよと5位まで順位を上げてきました!」
「4位のカール・カイサとはいくらか差はありますが、このペースでいけば追いつく可能性はあります」
「この展開は予想通りですか?」
「予想はしないでもなかったですが、可能性は低いと思っていました。ドラゴンはよく健闘しています。たいしたものです」
「観戦者としては、トップ争いに絡んで盛り上げてほしいところです」
「そうですね。カオスになればなるほど面白くなりますから」
などなど、実況と解説はそんなやりとりをした。
トップはレインボー・アイリーン、次いでフィチ、3位にヴァイオレットガール、4位はカール・カイサ。5位ドラゴンこと龍一は、トップ争いに追いつこうと必死の走りを見せる。
(やっぱりトップ争いは違うな!)
5位までは比較的、自分でも驚くほどどうにかいけたが。そこから、4位以上に迫るとなると、やはり勝手が違った。
ペースが違う。先頭は親しくしてくれているレインボー・アイリーンだが、ペースダウンをして待ってくれるなんてするわけもない、遠慮なく飛ばす。2位から4位もそれをよく追走している。
「OK。引き離すよ!」
レインボー・アイリーンはペースを上げる。タイムトライアルと言わん画ばかりに飛ばす。下手な温存作戦などしない。
「おっと、レインボー・アイリーンがファーステストラップ! 1分30秒130と、タイムトライアル並みのタイムをたたき出しました!」
実況と解説が伝えればチャットも盛り上がる。アレクサンドラはショーンを抱きしめ目を見開きディスプレイを凝視する
2位との差は少しずつ開いているように見える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます