第26話

早口に答えて、階段を駆け上がる。



その前に美緒がいるかどうか確認しないといけない。



あたしは期待を込めて自室のドアを開けた。



「美緒」



名前を呼んだものの、そこには誰の姿もなかった。



てっきりここにいてくれていると思っていたので、心が落ち込んでいくのがわかった。



念のためにベッドの下とかクローゼットの中まで確認したけれど、やっぱり美緒はいなかった。



「なんだ、いないのか」



ため息混じりに呟いてベッドに座る。



だけど、今日の咲の出来事を思い出すと美緒はまだどこかにいる。



どこかから、あたしたちの復讐を果たしてくれているんだ。



そう考えると、グズグズしていられないと感じた。



あたしができることなんてなにもないけれど、それでも立ち止まっていられない気分だ。



あたしは着替えを済ませると、スマホとサイフを持ってリビングへ降りた。



母親はちょうど掃除機をかけはじめたところだった。



「買い物に行ってくるね」



「あらそう? じゃあお願いね?」



「うん。行ってきます」



とにかく何かをしていたい気分だった。



自分にとっていいこと、プラスになることを。



イジメがなくなってようやく自分の人生を歩き始めることができたんだ。



これは美緒がくれた大きなプレゼントなんだ。



あたしは買い物内容が近所のコンビニで購入できるものばかりだと確認して、コンビニへ向かった。



入り口の前まで来て、そういえばここは真里菜がアルバイトをしているコンビにだと気がついた。



でもさすがに、バイトをはじめてすぐにあんなことがあったから、やめているかもしれない。



そう思いながら店内へ入ると、レジに真里菜が立っていて目を見開いた。



片手で懸命にレジ打ちをしているのだ。



真里菜でもそこまで一生懸命になれるのだと思うと、言葉がでなかった。



小さな弟と妹のためであることは間違いない。



しかし真里菜はどこか上の空で何度もレジを打ち間違えてお客さんから怒られていた。



少しかわいそうかもしれないと思ったが、あたしはすぐにその考えをかき消した。



真里菜はあたしや美緒になにをした?



殴ったり蹴ったり。



挙句カッターナイフを突きつけてきたのだ。



思い出すと腸が煮えくり返ってくる。



美緒を拷問した挙句殺した人間に情けなんて無用だ。



あたしは慌てている真里菜を見てほくそ笑んだのだった。

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