第15話

☆☆☆


それから放課後まで、あたしは一人で過ごすことになった。



今日のクラスの中心は完全に真里菜で、何度も宝くじが当たった話をしていた。



しかし、真里菜の家は裕福とはかけ離れている。



そんな中でもたった一枚の宝くじを購入していたことが不思議でならなかった。



「どうして宝くじを買っていたの?」



勇気を出してそれだけ質問をすると、真里菜は自信満々に「あたしの夢はお金持ちになることだから。1枚だけは買ってみるって決めてたの」と、説明してくれた。



それが当たるなんて、どれくらいの確立なんだろう。



計算してみなくても、途方もなく低い確率だということだけはわかった。



放課後になると宣言していた通り、真里菜たちは遊びに行ってしまったようだ。



それを見送ってから、あたしは一人で廃墟へと向かった。



あの廃墟は他の若者も勝手に出入りしているから、美緒のことが心配で仕方なかった。



「美緒、いるの?」



声をかけながら廃墟に入っても、誰の返事もなかった。



ただここ最近はあたしたち以外は来ていないようで、廊下などに薄くホコリがつもりはじめていた。



そこに足跡を残しながらリビングへ向かい、ドアを開ける。



そこには少しの変化も見せない状態で美緒が座っていた。



横になったりした形跡もなくリビングにもホコリが積もっている。



「美緒、わかる?」



あたしは美緒の前で膝をつき、その顔を覗き込んだ。



美緒は相変わらず灰色の目を開けていて、そこに座っているだけだ。



糞尿をした形跡もなく、飲み食いした形跡もない。



生きている人間ではありえないことだ。



「ねぇ美緒」



あたしは美緒の右手を握り締めた。



その冷たさにハッと息を飲んで美緒の手を見つめる。



その手はひどく乾燥していて、カサカサした手触りだ。



顔をしっかりと確かめて見ると、唇や頬の皮膚が浮いてきているのがわかった。



「今度、水を持ってきてあげるからね」



聞こえているかどうかわからなかったけれど、あたしはなにも言わない美緒にそう声をかけて、そっとリビングから出たのだった。

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