彼女の前頭葉

窮鼠

プロローグ

「うああああああ死ねえええええ!!」


食卓から落ちたコップが大きな音を立てて割れた。僕は、いま声を上げた美少女に両腕を捕まれ、テーブルに叩きつけられた。

彼女の押す力は緩むことなく、僕はテーブルごとズルズルと引きずられ、姿勢はほとんど卓上に仰向けになっている。

頭上でダイニングライトがチラチラ揺れて、僕の視界は白くぼやける。

白い作業用ヘルメットを被った彼女の頭が、視界の下からかぶさる形でライトの光をおおうと、視点が定まり彼女の顔がよく見えた。


揺れる黒髪の間から見える大きな黒の瞳は血走り、小刻みに震えながら僕の視線と交差する。

どこにそんな筋肉があるのだろうか、細くて白い腕は未だ僕の腕をギリギリと音がなるほどに強く握る。


「殺すうううう!」


僕は圧倒されて息を呑んだ。


やはり、僕の彼女は怒っていても美しい。


これが僕たちの、いつもどおりの日常である。


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彼女の前頭葉 窮鼠 @perrorist

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