第八話 炎の魔王


「焼き尽くせ『インフェルノ』」


「プギャァ……!」


 ドスンンン!!


 炎で焼かれながら最後の雄叫びが森中に響き、5メートルの巨体がその場に倒れた。

 我はひどく焼け焦げた金属の豚を袋に収める。ポイントが350ポイント加算された。


「此奴で我のポイントは合計3,550ポイントか」


 魔王である我『テオ・ミラーレア』は、コツコツとこの森の猛獣を狩っていた。


「それにしてもずいぶんと叫び声が減ってきたな、皆死んだか?」


 まだ森の中に娘達が大勢いた頃を思い出す。

 一斉に森へと入っていく我達を最初に襲ったのは、木に擬態した怪物だった。


「きゃああああ! だっ誰かああああ!」


 すぐ隣にいた娘がその怪物に襲われているのを見た我は。


「その娘を離せ『インフェルノ』」


「オオオオ……!」


 すぐにその木を焼き払うも。


「ダメ、だったか……」


 襲われた娘は既に死んでいた。




「ん? なんだこの匂いは」


 甘い蜂蜜のような匂いを感じたのはある黄色い花の咲いた木で、その周辺には50人近くの娘達が全員苦しそうに地面に倒れていた。


「どうして倒れているんだ? 『テーカン』」


 魔法でこの花と木を調べると『遅効性の花粉毒』と表示された。

 どうやらここで倒れた娘達は全員毒のある花粉を吸い込んでしまったようだ。


「この木が原因か。『インフェルノ』」


 木だけを焼き、倒れた娘達全員に。


「毒を焼き尽くせ『エキクドインフェルノ』」


 魔法陣が地面に浮かび上がり、我の炎で空気中にあった毒花粉だけを焼き消す。


「……くっ……苦しく……ないっ!?」


「やっ、やったーーー! 助かったーーー!」


 苦しさから解放されて喜びながら次々と起き上がる娘達。すると助けた娘の一人、おさげの娘が我の元に来ると。


「あのあの、助けてくれてあっ、ありがとうございます」


 頬を赤く染め、モジモジしながらお礼を言ってきた。


「うむ。動けるようになったのならすぐにここから立ち去――」


「きゃああああ!」


「火っ、火がああああっ!」


「何事だ!」


 叫び声のした方を見ると。


「ゴフン。ヒヒヒィィィ!」


 木々の間から口から炎を吹き出す真っ赤な馬が数十体飛び出してきた。

 せっかく毒から助かったというのに、馬のすぐ近くにいた娘数人が火に焼かれていた。


「くそっ! あの馬どもめ『インフェルノソード』!」


 我は炎の剣を手元に顕現させ。


「はぁっ!」


「「!? ヒヒヒー……」」


 二頭の馬を一気に討伐した。


「まだまだ! はあああっ!」


 娘達を守るため、我は必死に馬を迎撃していたが。


「うわああぁっ!」


「ひっ。こ、来ないでえええええ!」


『ヂューヂューッ!!』


 今度は我のいる場所の反対方向から、鋭い針を口から吹き出す人間大の巨大ネズミの群れが襲ってきた。


「あっ、足があああっ!」


「ううぅ。痛い、痛いよぉぉぉぉ……」


 なんということだ。


「お前ら少し大人しくしてろよ『インフェルノウォール』」


『ヒヒッ!?』


 我は炎の壁を召喚して馬どもを足止めしている隙に。


「ネズミどもを焼き尽くせ『メガインフェルノ』!」


 今度は大量にいるネズミどもの相手をした。

 だがしかし。


「ブルッ――ヒヒッ!!」


「きゃああああ! 助けてえええぇ!」


「今度はなんだ!」

 

 視線の先では馬どもが炎の壁を一頭、また一頭と飛び越えていた。


「くそっ。やはり同じ属性同士での足止めは難しかったか」


 我は炎の壁を飛び越えた馬どもを駆除しようとしたが。


「ええい邪魔だ!」


『ヂューーー!!』


 脅威と感じたのか、ネズミどもが我だけを攻撃してくるようになり、すぐにその場から動けなかった。


「いっ、いやーーーっ! やめてええええええっ!」


「熱い、熱いよぉ……」


 ネズミどもに足止めされている間にも、馬に焼かれている娘達。

 戦っている娘もいるが正直気休め程度だ。

 このままだと我以外この場にいる娘達が全員死んでしてしまう。

 なんとか、なんとかしないと……。

 

「そうだ! 『インフェルノウォール』」


『ヂュッ!?』


 炎の壁でネズミどもを足止めし。


「我が相手だ! 『インフェルノソード』はああっ!」


 我はすぐ馬どもの相手をしながら息を大きく吸い。


「生き残っている娘達よ! 我、テオ・ミラーレアがこの場にいる全員に命令を下す! 我が此奴らを足止めしている間に『ギーブボール』を使いこの場から脱出せよ!」


 この我の言葉を聞いた娘達はハッとなり。


「そうだ脱出!」パリン。


「ギーーーブ! もうギーブゥーーーーッ!」パリン。


「うえええぇん、怖いよおおおぉっ」パリン。


 我の命令に従い、次々と『ギーブボール』を割っていた。


「脱、出!」パリン。


 我にお礼を言ってきた、あのおさげの娘もネズミにやられたのか腕から血を流しながらも『ギーブボール』を割った。

 おさげの娘は煙に包まれながら。


「ぐすっ、ありがとうね。あなたのような優しい人と会うのは私生まれて初めてよ。私はあなたのこと一生忘れ……」


 最後まで言えなかったか。


「ぐずっ。デオぢゃん。あぎきゃどね……」


「ありがとーーー! もうここやだーーーーっ!……」


 おさげの娘同様次々と我に感謝を告げながら逃げていく娘達。

 その間我は最後まで足止めをし、我以外の生き残っている娘達全員が脱出したのを確認すると。


「ふふふ、やっとだ。これでもう邪魔者はみんな消えた」


 我は魔力を解放し、両手を上に上げ。


「この場にいる猛獣どもを全て焼き尽くせ! 『メテオインフェルノ』!」


 広範囲灼熱魔法を放った。

 魔法陣が空に大きく浮かび、漆黒の炎が我のいる場所を中心に次々と落ちてきて。


『ヒッヒヒーンンンッーー……!』


『ヂゥウウウウウウッーー……!』


 我の周囲、半径数百メートル圏内にいる全ての猛獣どもを森ごと焼き尽くした。

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