第七話 災厄の降臨

「獲物を発見」


 機械の翼を稼働させながら、現在千メートル上空を飛行中の僕『フーダム・ライナ』は。


「『ディスティニーシステム・レーザーモード起動』」


 ウィーン ガシャガシャ。


 僕の言葉に反応して6機のレーザー銃が背中から飛び出した。それを僕の周辺に固定させ。


「あの虫どもを殲滅せよ『ストライクブラスト』!」


 6色の光が集団で飛んでいた1メートルはある羽の生えた巨大な虫どもを次々と討伐していく。


「これくらいでいいだろう。落ちた虫どもを回収しないと」


 逃げた虫は放っておき、地上に落ちていった虫の死骸を回収するため森に入る。

 森の中では無数の虫の死骸と、それを食べている全身が金属でできた豚のような猛獣が数匹いた。


「僕の獲物だ、勝手に食べるな『ストライクブラスト』!」


 金属の豚へと6色のレーザーを撃ち込む。


 が。


「? フゴフゴ」


 全くダメージを受けている様子はなく、しまいには僕の攻撃を無視して虫を食べていた。


「……もういいや回収しよう」


 豚どもが食べてる虫は諦め、豚を無視しながら虫の死骸を回収することにした。

 まだ食べられてない虫を全て回収し終えるとポイントは250まで増えていた。


「25匹回収したから1匹あたり10ポイントか」


 回収を終え再び空高く飛び立つ。


「ここにはもう虫どもはもういないし、あの木へ行ってみようかな」


 僕の視線の先には天にまで届くかのごとくそびえ立つ巨大な木があった。

 場所が場所なだけに空を飛ぶことでしか行くことはできないだろう。

 それだけにポイントを稼ぐ場所としては、かなりベストな場所だと判断する。

 その理由はまず第一に空で狩りをするのは僕ともう一人しかいないという事。

 第二に先程の戦闘で逃げていった虫どもは全匹あの木の方向へと逃げていったという事。わざと数匹だけ虫を逃し、奴らの巣を探すために発信機をつけたら迷わずあの木へと向かっていた。


「おそらく虫どもはあの巨大な木を巣としているのだろう」


 ならあの木へ行けばどんどんポイントを稼ぐことができるに違いない。


「あの逃げた虫どもに気づかれないよう、超高度から行くか」


 エンジンを稼働させ、空のはるか上空、そろそろ宇宙という距離まで高度を上げる。


「凄い。あの木こんな高さまで生えているのか」


 現在高度85キロにまで達していたけど、僕と同じ高さに木の先端部があった。


「でもこれで目視でも迷わず向かえる」


 僕はエンジンを稼働させ、グングンと木に近づいていく。

 時間にしておよそ一時間程でたどり着くと、改めてその巨大さを思い知る。


「はぁぁぁぁぁぁ! すっ、凄い!」


 正直それ以外の感想は出てこなかった。

 葉っぱ一枚でも数百メートルクラスのビルほどの大きさだ。それが無数に生えている。

 枝は大きすぎて、雲で隠れていたら巨大な空中大陸のように見えるだろう。


「凄い凄い」


 木を見てるだけなのに科学者としての好奇心がどんどん溢れ出してくる。


「ふっふふふふ、じゃあ早速虫どもを探すとするか」


 8割は観察が目的だけどね。ふふ、ふふふふふふ。


 


 あたりを散策してみたけど。


「おかしいな虫が1匹もいない。それにあまりにも静かすぎる」


 得られた情報はものすっっっごく巨大な木ってことと、こんな巨大な木なのに周りを飛んでいる怪鳥や虫などが全然いないってことだけ。

 発信機の反応があるところまで行ってみても結果は同じだった。神隠しにあったかのように巣はもちろん虫1匹たりともそこにはいなかった。


「枝の中に巣があるのか?

 うーむ仕方ない攻撃してみよう。『ディスティニーシステム・爆撃モード起動』ミサイルを生成せよ」


 ウィーン ウィーンゴゴゴゴ ガシャン。


 僕はディスティニーシステムで生成させた、広範囲爆撃ミサイルを数発用意した。


「『ストライクミサイル』発射!」

 

 試しに発信機の反応がする場所へと数発撃ち込む。


 ズッドオオオオッ!!


 一発一発が戦略級の威力を誇るミサイルの爆撃により、打ち込んだ箇所の葉っぱが全て灰となるも枝は無傷だった。


「ふむ興味深いな。それで虫どもの反応は……まだあるだと!?」


 葉っぱは跡形もなく消え去ってるのに発信機の反応はまだこの辺りを指している。


「やっぱり変だ、この木には何か秘密がある」


 もう数発撃ち込んでみようか?


 そう考えていると。


 ザワッザワザワッ。


 先程までびくとも動かなかった枝が不規則に揺れ始めた。


「なんだ!? この反応は一体」


 ズゴゴゴゴゴッ!


 今度は地面が揺れ始める。

 空中から見ても地面がブレて見えるほどの凄い揺れだ。


「なんなんだこれは!? 地震? だがしかしこんなに揺れるものなのか!?」


 変化は突然のことだった。


 カッ!!


「うっ眩しい」


 急に木が激しく輝き出し。そして。


「こんな巨大な木が浮いただと!? ありえない。一体この木に何が起きてるんだ!?」


 空に浮きながらも木は光を放ち、どんどん球体型の薄い壁を生成していた。


「まずい、この位置だと光に巻き込まれてしまう。早く逃げないと!」


 僕はエンジンを最大パワーで稼働して、ギリギリ球体の範囲外へと逃げ出す。


「ふぅ。間に合った」


 僕の逃げた後も光の壁は木をどんどん覆っていき、ついに完全に木全体を覆ってしまった。


「ふふふふふふ素晴らしい。まるで巨大な卵のようだ。試しに攻撃してみるか?……いや、それとも……」


 そう考えている間にも、徐々に縮小していく光の球体。

 ふと先程木が生えていた地面を見ると、まるで傷口を塞ぐように地面が勝手に動きどんどん穴が塞がっていた。


「この地面も興味深いな。この動き、まるで巨大な生き物だ」


 自分の星とは全く違う様子に、改めてここが違う星なんだと実感させられる。


「素晴らしい素晴らしい。それにあの光の球も、もうあんなに小さくなっている」


 木を覆った光の球は、先程の木の葉っぱ一枚ほどの大きさにまで縮小していた。


 すると。


 ドクン。


「この音は? まるで鼓動のようだ」


 ドクンドクンドクン。


 ピシッ。


 鼓動が早くなるにつれ球体に亀裂のような線が現れ。


 パリッパリッ。


「生まれる、というのか!?」


 球体がどんどん割れていく。

 その様子はまるでひなが生まれるような感じだ。


 パリッパリッバリッバリ!


「カロロ……カロロッ」


 球体の中から生き物の泣き声が聞こえる。


「おお! あれがひな――」


 ギロリ。


 その生物と目が合った瞬間。


 ゾッゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ!!


「ひっ!?」


 僕はかつてない生命の危機を感じた。


「かはっ、はぁ……かっ」


 手足は震え、思うように呼吸ができない。


「あ、か……やっ……ヤバい……殺される!」


 全速力でエンジンを稼働し、僕はその場から逃げた。

 奴から遠ざかるほどに、どんどん震えも収まり呼吸も戻ってきた。


「はぁはぁ。ひっ、ひとまず最初の森に逃げよ」


 猛スピードで広場のある森まで逃げる途中、あの鳴き声が聞こえた。


「カロロロロ」


「えっ――」


 バクッ。


「?? 何が起きた?……うわっ!?」


 僕のすぐそばには、球体の中からこちらを覗いていた不気味な金色の瞳があった。


「なっななななななな、なぜこいつがここに!!」


 そいつは金色の羽が左右それぞれ3枚ずつ生えている深紅のドラゴンだった。

 そのドラゴンがクチャクチャと音を鳴らしながら僕を見つめている。


「あ、あ……」


 恐怖で震えが止まらない。


「早く……奴から、逃げないと!」


 逃げようとエンジンを稼働するも痛みが邪魔をする。


「――っなんだこの痛みは」

 

 痛みは下腹部から押し寄せた。僕は恐る恐る下を見ると。


「あ……あ」


 僕の腰より下が消えていた。


 ダバダバと血は流れ、臓器はちぎれ空中でぷらぷら浮いていた。


「あああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 耐えきれず絶叫。


「ああ……僕の体が……」


「カロロロロ」


 パキパキ。


「……パキ……パキ?」


 音の鳴る方、奴の口の端から小さな骨が飛び出していた。


「ひっ! あの骨は……それより早く……にげっ……」


 痛みで意識が薄れていく中、僕の全身を黒い影が覆う。


「なんだ……闇が――」


「カロロロロ」


 バクッ。

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