第三話 新たな出会い

「ここは?」


 扉の先には遠い記憶の中にある、公園のような広場があった。


 地面がありベンチや噴水、トレーニング用にも見れる遊具がそこらに設置されている。


 建物の中なのに、外に出たような変な感じだ。


 あたりを見渡すとおよそ1000人ほどの人人人。それも全員女だ。


 こいつら全員入隊希望者なのだろうか?


「まあいい。どこかに座る場所は……あった」


 私は近くにあったベンチに座り、試験開始まで待つことにした。


 1時間後。


「くかーーー……はっ……ふぁ~〜〜眠い。まだ始まらないのか?」


 服には涎の痕。


 どうやら暇すぎて寝てたようだ。


「おそふぁ〜〜〜……くかーー」


 再び眠りにつくと――。


 ゾ。


 と、ほんの僅かな殺気を感じ目を覚ます。


「だれ?」


 反射的に後ろを振り向き拳を打ち出すと。


「ふわっ!」


 相手に当たるギリギリで拳を止める。拳の先には固まって僅かに震えている、真っ黒な服装に顔を布で隠した不審者が立っていた。


「私に殺気を向けるからだ……ん? おいお前。生きてるか?」


 私の言葉で固まっていた不審者はすぐにハッとなり。


「よっよよ、よくぞアタイの気配に気づいたね」


「はぁ……」


 動揺しながらも少女は顔に巻いていた布を剥ぎ取り、その素顔を現した。


 深い青色の髪におかっぱでポニーテール。見た目年齢は10代中頃くらいか?


「私に何のようだ? 返答次第では」


 硬く握りしめた拳を見せつけると。


「ちょっ、ちょっとアンタの後ろに立ってただけなの。もっ、もちろん悪気はないよ!」


 今度こそ殴られるとでも思ったのか、少女はあわあわとうちわのように手を横に振っていた。


「そうか。てっきり私を殺そうとしているかと?」


「あっ、あはは、そんなわけないじゃん」


 冷や汗をかいて動揺する少女。かなり怪しい。


「まあいい。それで、お前は一体何者だ?」


「アタイ? アタイはペンタ。『ナツカゼ・ペンタ』」


「自己紹介しろとは言ってないが」


「あっ!? ごめんつい……」


 素直に謝るペンタとやら。


 素直な奴だ。もしかして敵じゃないのか?


「謝らなくていい。私はクロノ。『ディーア・クロノ』だ」


「クロノって名前なんだ、いい名前だね」


「ありがとう」


 私の事を素直に褒めてくれたペンタ。

 私が睨みつけるとその顔はすぐ『また余計なことをしちゃったかな』という顔をしていたが私の心の中はというと……。


 褒めてくれた! 名前を褒めてくれた。嬉しい。すっっっごく嬉しい! 彼女は敵じゃないうんきっと絶対そうだ!


 ウルカから貰った『ディーア・クロノ』という大切な名前。


 その名前を褒めてくれたペンタ。


 たったそれだけだと思うかもしれないが、私のペンタに対する評価は急上昇していた。


 そんなことを知らないペンタは話題を変えるように。


「い、いやーそれにしてもクロノで4人目だよ、アタイの気配に気づいたのはさ。攻撃してきたのはクロノが初めてだけどね」


「4人って、私以外にもこんなことしてたのか?」


 ペンタは得意げな顔になり。


「ふっふーん、この場にいる女の子全員にしたよ。アタイ3時間前からここにいて暇だったから、ちょっと殺せそうな相手か試してたの。で、クロノで最後ってわけ」


「やっぱり殺そうとしているじゃないか」


「あっ、違う違うただ殺せそうか見極めてただけなの」


 何が違うのかわからないが、まあその気はないのだろう。ペンタを信じることにする……名前を褒めてくれたし。


「アタイはこれでも忍びの頭領をしていたのさ。こんなの朝飯前よ」


「忍びってのは忍者のことか?」


「忍者知ってるの!? そうだよ忍者。クロノのには忍者いたんだね」


「ああ、私の生まれる前だけどな」


 今ペンタの言葉に何か違和感があった気がする。星?

 それと周りの女達がペンタと同じ忍びなのか気になったので聞いてみた。


「ここにいる女達はみんなお前と同じ忍びなのか?」


「ううん違うよ。ここにいる女の子達はみんなから来た子達だよ」


 やっぱり星って言ったな。ということは考えられる事は一つ。


「つまりここにいる全員が異星人ってことか」


 私の指摘にペンタはニッコリ笑いながら。


「正解。アタイもクロノもここにいるみーーんな異星人だよ」


 ペンタの言葉に、私の中にあった違和感が消え去った。

 そうか。ペンタもアイツらもみんな別の星出身なのか。


「それとこれはアタイ情報だけどね。ここにいる女の子達はみんな自分の星では1番の実力者なんだって。ここにいる約100人に聞いたからほぼほぼ間違いないよ」


「そうなのか?」


「うん。でも私の見解じゃ本当に強そうなのはクロノを含めて4人ってとこかな。あっこれもアタイ情報ね」


「4人か」


 それなら私が今すぐ全員蹴散らしてやろうか。


 ペンタにバレないよう周囲の女達を見ながら拳を握った。


 その時。


 バンっ!


 私の通ってきたあの巨大な扉が開いた。


「あれ? あの扉開くじゃないっすか」


 女の誰かが呟いていた。それに関しては同感だったが私は口には出さなかった。


「入隊希望者達は集まってるな!」


 開いた扉の中心には、ペンタと同い年くらいの幼さで、緑色の髪にウルカと同じような服装の女が1人立っていた。


 女は周りを見渡し、大きく息を吸うと。


「早速だがこれから『ガーディアンズ』入隊試験を開始する!」

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