第2話 だるまさんがころんだ
2-1 だれ?
小学校二年の頃、「だるまさんがころんだ」がブームになった時期があった。
学校でもやってたけど、家に帰ってからやることもあった。
その日も小さい公園(よく遊ぶ公園が二つあったのでそう呼んでいた)で遊んでいると、見慣れない男の子がやってきた。
男の子は「いーれて!」とやってきて、いっしょに遊ぶのだが、「だるまさんがころんだ」をやめると、いつの間にかいなくなっていた。
同じことが何回か続いたので、家に帰ってお母さんに話すと、
「なんていう子なの?」
と聞いてきた。
僕は必死で名前を思い出そうとしたけど、なぜか思い出せなかった。
「?……なんて言ったかなあ」
「そんなに何度も来るなら名前くらい聞いてあげなさいよ」
と言われた。……でも名前は聞いていたんだ。……それなのに思い出せない。すぐそこまで出そうなんだけど……。
次の日、学校でみんなに聞いたけど、やっぱりだれも言えなかった。
だからみんなで作戦を立てて、小さい公園で「だるまさんがころんだ」をやることにした。
学校が終わって、小さい公園で「だるまさんがころんだ」をやっていると、やっぱりその子はやってきた。
不思議なのは、その子が現れると、全員が名前を思い出したということだった。
「いーれて」
「いいよ、コウジくん!こっちこっち」
僕は作戦通り、拾った石の角で滑り台の柱に「コウジ」と刻んだ。
「だるまさんがころんだ」が終わると、コウジくんはやっぱりいなくなっていた。
五時になったので、みんなが帰ろうとした時、誰かが言った。
「あっ、あの子の名前!」
僕たちは危うく作戦の目的を忘れるところだった。
「これ見て」
僕は滑り台の柱を指差した。
「コウジかあ、そうだよ、あの子はコウジだ」
みんな口々にその名前を言いながら家に帰って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます