6 勇者は真犯人に辿り着く。
俺が目を醒ましても俺の悪夢は醒めたりしない。
「顔色悪いよ。大丈夫なの?」
殺して埋めたはずの
――また俺は、殺されたのか。
行為に夢中になりすぎて逆襲された? いや、そんなはずはない。間違いなくこの手でリーティアを絞め殺した。犯したのはその後だ。死体の後始末もした。単に、リーティアが犯人ではなかったというだけにすぎない。真犯人に殺されたのだ、俺は。
「問題ない。昨日ちょっとハリキリすぎただけだろ」
「やだもー」
この女は犯人ではない。誤って殺してしまって悪かったな。そう思いつつ、女の頬に手を触れさせると、リーティアはくすぐったそうに目を細めた。
これで俺の《女神の砂時計》の手持ちはゼロ。今回の件まで気にしたことも無かったが、身近に殺意がある現状で《砂時計》が無いというのはひどく心もとない。魔王城に行って新しく手に入れなければ。魔王に文句を言われるだろうが仕方あるまい。
「やっぱり具合悪そうだよ。サレーヌに診てもらったら?」
「……サレーヌか」
俺殺害の容疑者は残すところそのサレーヌだけなのだ。あの女が真犯人に違いない。聖女の仮面をかぶったクソ女め。全世界の希望、“不屈の勇者”たるこの俺を何度も何度も殺しやがって。ただで済むと思うなよ。
「あ。やっぱり嫌? あの子とあんまり相性良くないもんね」
「わざわざ治癒魔法を使ってもらうほどじゃないさ」
治癒魔法をかけられるような距離にサレーヌを近寄らせたくない。あの女には魔王城の罠に嵌って死んでもらうとしよう。
そうと決まれば、
「リーティア、一階にみんなを集めてくれ」
「りょうか~い」
さっさと魔王城に出発しよう。そこですべて終わりにしてやる。
俺が準備を整えて一階に下りると、まだ誰も集まっていなかった。
その中のひとりが茶を淹れて持ってきてくれた。恭しく差し出されるカップを受け取る。湯気からいい香りが漂う。一口飲むと芳醇な香りと微かな甘さが舌の上に広がった。
「……甘い、だと?」
いつも口にする茶は香りは良くても甘くはない。この甘さは、何かの薬の甘味に違いない……。手からこぼれ落ちたカップの割れる音を聞きながら、俺の意識は泥沼の底に引きずり込まれていった。
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