4 勇者は逆襲を企てる。
俺を殺した犯人や動機をいちいち考えるよりも予防的措置を取った方がいいだろう。殺られる前に殺る。それが一番手っ取り早い。
どうせパーティメンバーは全員もれなく魔王への供物なのだ。ここで殺してしまっても問題ない。俺が殺されてしまうことの方が大問題だ。
「さて、と」
俺は宿の部屋を出ると裏の林へと足を向けた。
勿論、呼び出した相手を抹殺するためだ。
呼び出したのは女騎士のエクノス。物理的な殺傷能力に最も優れているからだ。正面戦闘で負ける気はしないが、不意打ちで俺を殺せる可能性はこいつが一番高い。真っ先に始末すべき相手と言えた。
待ち合わせの場所に立っているエクノスの背後からそっと忍び寄る。勇者には不似合いな忍び足スキルを俺は極限まで鍛えてある。いざという時の不意打ちにつかうためだ。卑怯卑劣というなかれ。先に俺を殺そうとしてきたのは犯人の方だ。
俺は伝説の聖剣で隙だらけのエクノスを貫こうとして――
後頭部に強い衝撃を受け、
――目を醒ました。
アイテムストレージの《砂時計》は残り一個。俺は思わず頭を抱えた。
「くそっ」
「おはよ。朝からバタバタ元気がいいわね」
跳ね起きて悪態を吐く俺にリーティアはにこにこ笑っていた。
エクノスを殺す直前に、俺は殺されていた。
エクノスは犯人ではなかった。
俺は全裸のリーティアの顔をじっと見つめた。
「私の胸より顔をまじまじ見てくるるなんて珍しいね」
「……」
「なんかはずかしいな」
などとはにかんでいるこいつが殺人鬼なのかもしれないと俺は考えていた。
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