第4話 はじめての依頼
本日の依頼者。名前は
「それで?今日はどういった用件で?」
「実はあるものを無くして……」
探偵部なんて
「あるものって?」
「ヘアピンなんですけど……」
「新しいの買ったら?」
「はぁ……。こいつデリカシーの欠片もないのね」
成宮から
嘘で自分を塗りたくる奴の言葉は信用があまりないからな。嘘です。これ以上は心が保ちそうに無いです。こんなのが好きなのはMしかいないと思いました。
「お気に入りだったら無くしても諦めきれないことだってあるでしょうに」
「そ、そういうものですかね」
「そ、そうですね。私の宝物って言ったら誇張し過ぎかもしれないですけど、なるべくなら見つけたいなぁって思ってます……」
依頼者と探偵の
鮮やかな
すべき事は
「今日だけだからな」
「探してくれるの?」
「このまま見捨てて帰るのも夢見が悪いからな」
「君のツンデレなんて需要ないけど」
「お前の毒舌はもっとねえよ」
思っている事をストレートに言い過ぎるのも考えものだと思います。さては自称サバサバ系か?そのキャラは一部の男にしか受けないから辞めとけ?男女共通の敵になりかねないから。
「正直に手伝いたいって言えばいいのよ」
「それはお前が不必要だと判断したツンデレ要素じゃないか?」
腰に手を当てて自信満々に言う
「じゃあ探してくれるんですか?」
「ええ。任せて。私たちで必ず見つけるわ!」
俺が主戦力みたいな物言いだな。……嘘ですよね。これがきっかけで本入部とかならないよな。新入社員が辞めたいと思った時にはもう既にチームの割と重要なポジションに入れ込まれて辞めるに辞めれない状況みたいなことにならないよな?
この発言はフラグにならないよな?
***
時刻は四時半といったところ。
ちなみに俺の仕事はお茶を入れること。ちなみにお茶は自販機で買った緑茶。つまりパシリである。
「いつ頃無くしたことに気付いたの?」
「昨日家に帰ってから気付いて……。それで今日の朝早くから探していたんですけど……」
「見つけられはしなかった、ということね」
正直本人が見つけられなかった落とし物を他人が意図的に見つけるのは結構難しいと思う。本人が心当たりのある場所で見つけられないのなら諦めるのがいいのではと思うんだが。
「学校で落としたってことに自信は持てる?」
「体育とか移動教室が多かったので……。その道中に落としたんじゃないかなとは思ってて」
「じゃあ昨日の時間割を教えてくれる?移動教室の際に落としたかもしれないわね」
続いて三時限目が体育。ここでヘアピンは取って教室の机の上に置いていた。そして四時限目は美術。着替えもあって時間がなく、急いで授業に向かったとのこと。
そして、午後の授業は教室で受けたので移動はしていない。それ以外の移動といっても、
どうやら美術の授業でヘアピンを付けていなかったが、その状況に慣れてしまい、付けることを忘れていたらしい。そしてそのまま授業が終わって帰宅して、ヘアピンがないことに気付いたということ。
「じゃあ教室内にあるんじゃないのか?」
「そう思って教室は探したんですけど……」
「無かった。ということね。じゃあ移動教室にあるんじゃない?」
「多分そうだと思ったんですけど……」
ですけどですけどって、仕事でミスしてやらかした時に言い訳する新入社員みたいだな。ソースは一ヶ月も続けられずにバイトを辞めた俺。ミスして気まずくなって即座に撤退した記憶がある。あの状況では退く以外に道はなかった……。先輩のお前使えねぇなって言いたげの目が今も忘れられません。てか言ってました。
そんな過去の俺を
「友達に手伝いを頼まなかったのか?」
「私は部活に所属してないんですけど、友達は部活をしてて……。私の過失で迷惑をかけるのも申し訳ないなって思っちゃって」
「そんな考えすぎよ」
「そう……ですよね……多分」
どうやら中代は人の迷惑になってないか考えてしまうタイプらしい。そんなの気にしないで頼るだけ頼ればいいと思うんだが。本当に友達なのであれば。
まぁ友達の定義も
聞くことができる神経を持っている奴はよっぽど他人との関わりが淡白な奴か、人間関係が
自分から遠い人間だから言えることもあるのだろう。SNSやネットがいい例だ。人は溜め込むことができる容量にも限度がある。どこかでガス抜きをしなくてはならない。
そのガス抜きをする終着点が探偵部なら、依頼は遂行せねばなるまい。多分。
「とりあえずもう一回探したらどう?三人いれば見逃すこともないだろ」
「まぁそれがセオリーかもね。よし。三人で昨日の
「は、はい」
カッコよく言ったつもりかもしれんが、移動しているだけだ。完全に探偵になりきっている。なりきれているのかどうかは甚だ疑問だが。
「何ボーッと突っ立ってんの。早く来て見習い助手」
「助手に見習いなんかあるのか……?てか助手じゃない。絶対に」
「な、仲良くしましょう……?」
「みんなで探すんじゃなかったのか?」
「どこに行ったんでしょうか?」
どうやら依頼者のヘアピンを探す前に、
俺たちはダッシュで成宮を確保すべく後を追った。
「ん?なんか踏んだ?」
「きゃっっ!」
「おあっ!?」
駆け出そうと踏み込んだ右足に違和感。気になってブレーキをかけた瞬間、背中に柔らかい感触。
スカートの中は見えない。見えないといったら見えない。真相は
「ごめん。大丈夫?」
「あ、うん……。大丈夫……です」
恥ずかしいところを見られたといった様子で顔を赤らめる中代。俺は一瞬目に入ったモノから即座に目を離し、彼女の顔だけを見るようにして手を伸ばした。いや、俺のせいだから罪悪感が急上昇なんだけど……。
罪悪感を隠すように中代の腕を引っ張って立たせる。中代はスカートについた埃を払うと、転んだ拍子に何か落としたのか、地面にある物を拾っているように見えた。
「じゃあ……探すか」
「そ、そうですね」
二人の顔が赤いのも、体が暑くてブレザーを脱ぎたくなるのも全部、
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