第24話 無実を証明する方法。

「アンルースにジェイを会わせるのはダメだ。」


ウイレードが首を振る。

ジグは別室へと待機してもらうことになった。

本人もそれを素直に従う。

何も言わず俯き、メイドに案内されていった。


執務室に残るはウイレード、エルヴァン、そしてルーゼンの3人。


「……確かにジグはほぼ無実だと思うが、疑いが晴れていないからな……。」


エルヴァンはそう言うと、ガシガシと頭をかき、続けた。


「もしジグが呪いをかけた犯人であれば、会わせた時点でアンルースの命を奪うかもしれない。

だけどここまで色々話してくれる反応を見ても、態度は真摯だし、話す内容も正直に答えている様子だと思います。

……何かあった時の証明のために、神官を間に置いて近寄らせない条件とかで会わせるっていう手も……。」


「……いや、それも危険だ。」


エルヴァンの言葉にウイレードは縦には首を振らなかった。


ルーゼンとしては、今のジグはきっと呪いの犯人ではないと信じていた。

彼も目には強い意思も見えたからだ。


「……とりあえず、アンルースのお腹の父親の件もはっきり証明できないからな……。

もうどうせならまとめて誰だかはっきりさせようかと思う。」


「……まとめてですか?」


ウイレードの言っていることは少し投げやりにも思えたが、案外いい案なのかもしれないとも思った。

まとめてしまえばこっちも動きやすい。

そのまま犯人を見つけて呪いを解かせれば、ジグの疑いも晴れるだろうし。


ルーゼンがそんなことを考えていると、ウイレードが続けた。


「そうだ、怪しいと思うやつにアンルースからのお茶会の招待状を送るのだ。

そこで君達も招待された側の『重要参考人』として、情報収集してもらい犯人探しをする。

アンルースが呪いが解けたと思い、犯人は焦る事だろう。」


「……だから必ず犯人は来るわけですね。」


「そうだ。不本意だが、アンルースの妊娠の件がどこかから漏れているようだ。

だからこそ、保留にしたままの結婚式に世間の注目が集まっている。

『結婚相手は誰だろう』と。

情報が漏れた件に関してメイドをしらみ潰しに探しているが、もうここまで拡がって仕舞えば、戸は立てられないだろう。

だからこそそれを逆手に取り、お腹の子の父親、呪いの犯人を見つけ出す。」


「……失敗できないですね。」


自分が呟いた言葉が自分の気持ちも重くした。

エルヴァンもじっとルーゼンを見つめている。


「ああ、私も協力するが、君たちにかかっている。

……アンルーズの容態も思わしくない。

ずっと眠ったままで、体も衰弱してきている。

そろそろ限界が近いかもしれない……。」


このままだとアンルースが死ぬかもしれないという恐怖。

もう時間がない。

そう思うと背筋が凍った。

「……わかりました。」


ルーゼンが覚悟を決めるようにそう言った。




隣国の王子が集まることを考慮し、いつも以上に警備が強化されることになるだろう。

アンルースと付き合ったことがある人物なら、彼女の我儘っぷりはわかっているだろうし、急なお茶会の招待状が届いたことで、妊娠に思い当たる人も、呪いの犯人も、どんなことをしてでも来るだろう。


お茶会は10日後と決まった。


参加者はお腹の父親候補だけでも18人。

そして自分たちとアンルースに恨みを持つ者も含んで、目星していることを悟られないダミーとして総勢30人を招待することになった。

 

その中でルーゼンたちがメインで話をする人が8名。

うまくいくか不安だが、出来ることを頑張ろうと思うのだった。

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