4.4つめの人生
私は、嫌われ者だった。
友人はもちろん-そんなものがいたとしたら、だが-、家族からも疎まれているような存在だった。
だから、だろうか。
私は極度の人間不信で、人間嫌いだった。
もしかしたら、私のこの性格のせいで、嫌われていたのかも知れない。
今となっては、わからないが。
卵が先か、鶏が先か。
そんなことはどちらでもよい。
とにかく私は、すべての人間が嫌いだった。時には私自身でさえも。
時は、戦争の時代。
使える男はすべて戦場に駆り出され、愛する者との最後になるかも知れない別れをかわしあい、戦場へと向かう。
私は、愛する者などいなかった。
また、私を愛してくれる者も。
そして何より、私自身が、私自身を愛してはいなかった。
だから、死を怖れることはなかった。
従って、自ら進んで危険地帯に志願したのだが。
何故かまわりの者が次々負傷し、死にゆく中で、私1人が生き残った。
当然のように、私の階級はどんどんあがる。
だが、そんな物が私にとって、なんの役に立つものか。
自分一人では消費できないほどの財を作りあげ、だからといって、まわりのものは誰1人として私に近づこうとしないし、私も近づける気など、ない。
独り身は楽ではあったが、時として、この上もない孤独感にさいなまれる。
妙な人間関係に巻き込まれる心配もないし、よけいなことで悩む面倒もないし、どうでもいいことで心を傷つけることもない。
だが。
誰かと一緒に慰め合ったり、酒を酌み交わして笑い合ったりすることもない。
当然、女と恋に落ちることも、ただの一度もなかった。
確かに、平和ではあった。この点は、幸せであった、といえよう。
だが。
本当に、これが幸せであるのか。
漠然とした考えを持ちつつ、それでも私はかなりの高齢まで生き長らえ、そして「この世」に別れを告げた。
誰に看取られることもなく、たった1人で。
そしてまた、「この世」へ。
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