2.2つめの人生
時は、争いの時代。
前の人生で、女人との恋の駆け引きに嫌気がさしていたためか、この時私は、女だった。
愛していた。
心の底からあの人を愛していた。
そしてそれは、両家にとっても、祝福された結婚のはずだった-政略結婚。
争いの絶えなかった両家の架け橋となるべく、私はあの家に嫁いだ。
そしてあの人の妻となり、跡継ぎとなる息子も生まれた。
両家の争いは、おさまった。
少なくとも、私はそう思っていた。
なんと言っても、この家には私がいる。よもや、実家がこの私の-私とかわいい子供達のいるこの家に攻めてこようとは。
私が心の底から愛したあの人を、あの人の一族を根絶やしにしようとは。
私は確かにあの人を愛していた。
でも、女の身で、いったい何ができよう。あの人のために何が。
守りたかった。
あの人を、かわいい子供達を、あの家を-私が嫁いだあの家を、私が愛したあの人の家を。
何もできずに、何の役にも立つことができずに、私は実家の助けをはねのけて、あの人と共に死ぬことを選んだ。
あの人は、少しも私を恨まなかった。
最後まで私を愛してくれた。
私を、私のかわいい子供達を、愛してくれ、そして、一緒に死ぬことを選んでくれた。
自分の家を根絶やしにした、憎き敵の娘。
武士の魂は、それでも最後は夫の愛情に阻まれ、私は、愛するあの人の腕の中で、あの人と共に「この世」から去った。
この戦乱の世の中に生きて、愛する人と共に死ねるということは-最期まで愛する人の腕の中にいられる、ということは、私には最高の幸せであるように思えた。
しかし一方で、愛する人のために何一つできなかった女の身を、恨みがましく思ってもいたように、思う。
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