第2話
「ということがさっきの外掃除の時にあってね………」
はい、周りからすっごく冷めた目で見つめられています。誰も信じていなさそうですね、ハイ。一応、本当にあった事なんだけどなぁ……
「そんな訳ないじゃーん。だっていつ見ても本しか読んでなくない?」
まぁそれには頷ける。時々友達とも喋ってるけどな。
「きっと作り話でしょー、というか絶対?」
「だってね、あの子が『殴らせろ』なんて言わないでしょ」
そんなことを話していたら、バッチリあの子…もとい石井さんと目が合いました。
バッドタイミング。
こんなタイミングある?神様のイタズラかな?かなり酷いよ!
「ちょっとこっちに来て」
笑顔が怖いよぉぉぉー!
目、笑ってませんよね!!怒ってますよね、これは。
廊下に呼び出して俺に何する気だ!
ニッコリ笑いながらジッとこちらを見ているので、行くしかないです、はい。
周りからの好奇の視線がすごい。ヤバい。質問攻めされる未来しか見えない。
女子が、待ちきれなくなったのか、笑みを深めてこっちに来る!!目だけは不機嫌そうに目を細めながら……!
ついにゼロ距離ですよ!
女子と初のゼロ距離接近、全く嬉しくない…
耳元で、女子が顔だけはニコニコさせて囁いた。
「さぁ……説明して貰おうか」
ヒィィィィィ!!!
怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!トラウマ級の怖さだよ!!
これは、かなり怒ってらっしゃる……!
腕を掴まれ、問答無用とでも言うように、女子は俺をぐんぐん廊下に引っ張っていく。
こっちを生暖かい目で見るな!そういうんじゃないから!!まじで。恋愛事じゃないんですよ、わかってる!?
生暖かい目をしたまま、うんうんとか頷くな!ぜってー分かってないだろ!
俺の必死の訴えも虚しく、ズルズルと廊下に引っ張られる。
「絶対付き合ってるとかいう噂が立つぞ!なぁ!否定しなくてもいいのか!?」
「……いい。別に」
ふぇ?否定しなくてもいいと?どういうことでしょうね??
なんか、もしかしてこいつ、俺のこと好きなのでは……?付き合ってるという噂を否定しない……ということは……?
こいつは俺と付き合いたいのか!?
「ムキになって否定したりすると、図星を差されて狼狽えているようにしか見えないから……。静かに否定したり、それか放置するのが一番」
まぁ違いますよねー!!そう思ってましたよ、俺も。その通りだと思いますです、ハイ。ちょっとざんね……………。何を思ってるんだ、俺は。
女子はそっぽを向いたまま、こちらを見もしない。嫌われたかな?まぁ殴らせろって言ってくるくらいのレベルだからね。
ほんとにこっち見ないな。え、マジで嫌われちゃった?
俺は、そーっと回り込んで女子を正面から見た。
「俺のこと……嫌い?」
女子はビクッと震えた。驚いたらしい。
「……違う…よ…?」
二人して、一瞬フリーズ。
え、は?え、どゆこと?え?嫌いじゃないの?は、え?え?ん?
嫌いじゃない=好き……では……?
「えっ!?」
脳内がハチャメチャですね、ハイ。まぁ取り敢えず落ち着こうか、俺。
その直後、顔を真っ赤にしながら、廻し蹴りが飛んできた。女子って怖い。
「煩い。黙れ。シャラップ。はぁ?ふざけるなよ。殴られたいのか?」
殴られたいのかって……もうすでに蹴られてますです、ハイ。
睨まないでー、怖い怖い怖い!
すみませんでした!俺が悪かったです!
みんなでも信じてなかったよ!うん、きっと大丈夫だよ!うん、多分!きっと!
「大丈夫だって、きっと、うん、いや多分。みんな冗談半分で聞いてたからさ、信じてはなかったと思うよ!」
無言でまたパンチが飛んできましたよー!
もう慣れはじめてる自分が怖いですね、ハイ。
「ほん……と……?」
ちょこんと見上げてくる女子。こいつ、そーいえば背が低いんだなぁ…とか思ったりする。
手を乗せるのにちょうど良さそうな高さに頭があるなぁとか考えて、ぽすっと、何も考えずに女子の頭に手を乗せる。
「あん?」
なんなの?俺悪いことした?なんで蹴られてるの?まじで。ほんとに。的確にスネを蹴ってきてるんだけど……痛い、これだいぶ痛いよ。
「ちっちゃいって考えたんでしょ。ちっちゃいって……チビって思ったでしょ、ねぇ、ちっちゃくないから、チビじゃないから。ねぇ、シャラップ。フォーエバー」
なんだか………逆鱗に触れてしまったようです。
怖い。怖いよ。
ごめんって、ごめん。そんな事考えたんじゃないって。ただ……ちょうどいいところに頭があったから手を乗せてみただけだって……
「ゴメンナサイ」
言いたいことは色々あるけど、それ言うと絶対怒らせる………から、静かにしてます、ハイ。
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