物語の結末をあらかじめ知る「黒幕」へと転生した主人公。本来なら討たれるべき宿命を背負った彼が選んだのは、ゲーム知識という最強の武器と、共に成長する「進化する魔剣」を手に、世界の理そのものをねじ伏せる道でした。
本作の白眉は、圧倒的な「情報優位」から繰り出される容赦のない攻略劇にあります。破滅フラグを事前に粉砕するだけでなく、本来敵対するはずの要素さえも自らの糧へと変えていくプロセスは、まさに知略と武力が融合したカタルシスの極致です。
特に、使い手と共に進化を遂げる「魔剣」の存在が、物語に独自の成長軸をもたらしています。単なる最強の提示ではなく、知識を現実に変えるための「力」が段階的に強化される描写は、読者の知的好奇心とワクワク感を絶え間なく刺激します。
予定調和の悲劇を拒絶し、絶対的な「個」として君臨する黒幕の生存戦略。理不尽を力でねじ伏せる、極上の「逆転無双」を求める読者に強く推薦します。
期せずして、クリアしたゲーム世界に転生することになった椎名蓮。ただし、ゲームの主人公ではなく、その裏切り者レン・アシュトンとして。
不幸な運命を回避するため、幼いときから努力を重ねていくレン。結果、頭角を現すことに。
ただ、ゲームとは違って全体を把握できないせいもあってか、アクシデントに対して、完全な対処ができない状況が続く。けっして結果が見えた楽勝人生ではなかった。
それどころか自分の行動によって、いつしか歴史が変わっていく。ゲームで知り得た話とは異なり、より緊迫感が増していく状況に。はらはらどきどき展開の連続。
戦闘シーンも緊迫感があり、先へ先へとどんどん読み進めてしまいます。
ヒロインも幼いながらも理知的で、鈍感主人公との間にラブコメチックな勘違いシーンなんかもあったりして。
いろいろと想像を掻き立てられるストーリー展開が読み手の考察を誘う。なによりも構成力の秀逸さが光る作品です。