第4話

「で、なんでまだ現世にへばりついてんだジイさん」

俺の前には成仏したはずのジジイが座っていた。プールで満足し、ホテルに一泊してから帰ってきたが、ジジイはまだ俺に憑いてくる。最初は、すぐには消えないのだろうと思い、ホテルの部屋に戻ったりしたが、家に帰ってきてもなお成仏しないのはおかしい。

「それがわかんねえんだよ」

「だってジイさん、もう十分満足したんじゃないのかよ」

「そのつもりなんだけどなあ。あんなに近くでねーちゃんが見れたしよ」

確かに、あれだけ近くで水着美女が見れれば十分だろう。だがジジイは成仏していない。俺は聞いてみた。

「なあ、アンタもしかして、まだやり残してることがあるんじゃないか?」

「うーんそうだなあ………」

ジジイはひとしきり悩んだあげく言った。

「一つだけ、思い当たることがある」

「カワイイねーちゃんのいる混浴温泉に行きたい」

少しの静寂が訪れ、そして俺は大声で叫んだ。

「このクソジジイ!早く成仏しろ!」

「それができたら苦労しねえ!早く温泉に連れてけ!」

ジジイが言い返してきた。またしても俺に頼ってくるつもりなのだろう。

どうやら俺の平穏が戻ってくるのは当分先になりそうだ。

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死んだジジイが俺に憑いてくる なのさP @mitya_nanosa

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