第41話 他視点
「噂を流したのはおそらく、竜神官達だと思われます」
ソフィアとの買い物を終え宮殿についた深夜。
ルヴァイスの執務室でテオが報告書を片手にルヴァイスに告げる。
「まったく、無駄な事に熱心なものだな」
ルヴァイスは報告を聞きながらため息をついた。
ソフィアにはルヴァイスが広めたと説明したが実際にはルヴァイスはそのような行為はしていない。
デイジアもグラシアもルヴァイスとの一件以後、神殿で急速に力を失い、聖女としての地位を奪われリザイア家に追放されたと聞いている。
ソフィアに嫌がらせをしてくるような力もないからだ。
おそらくルヴァイスの従弟にあたる別の竜人を王位に推すために竜神官達が広めたもの。
ソフィアが【番】などという噂を流せば、ルヴァイスとソフィアの間に子を待望する意見が出てきてしまう。
いくらルヴァイスが子も呪われる恐れがあると反対したとしても、ソフィアが成人後に意図せず子どもができてしまう可能性や、ルヴァイスの弟の子をルヴァイスとソフィアの養子にして王位につかせる可能性を危惧しているのかもしれない。
そうなる前にと勝手に手をうったのだろうが……。
ソフィアを大事にするあまり表舞台にださないのをあちらは利用してきたのだ。
(だが、この噂はかえって都合がいいかもしれぬな……)
この噂が流れている限り、ソフィアに取り入ろうとする貴族も減るだろう。
ソフィアはまだ15歳。竜人は20歳までは子をなす行為は禁止されている。
女性側が20歳になった時はじめて結婚、出産が許されるのだ。
竜人は高い魔力がゆえ、母体が成熟していなければ母子もろとも子の高い魔力により魔力障害をおこし死んでしまう事が多いため作られた法律であり仕組みであった。
20歳になるまでは子を心配する竜神官達の標的がソフィアにむく事はないだろう。
(ソフィアの地位を確立するためにもあと5年で必要最低限の作物は実用化しておかないと)
ルヴァイスはジャイルの研究成果の書類に視線を落とした。
以前より呪いによる痛みと倦怠感が日に日に酷くなっているのは感じる。
竜神官達の嫌がらせで痛み止めの薬の量が減っているため、気力でのりきってはいるが呪いは確実にルヴァイスの身体をむしばんでいるだろう。
薬をいまから竜神官達に懇願して増やしてもあれは単なる痛み止めだ。
呪いの進行は止められない。そんなことをする位なら痛みに耐えればいいだけだ。
聖気のいらない作物を世に広めソフィアを古代の子として聖女以上の存在と祭り上げ、彼女に研究の全権を譲渡する。
そしてルヴァイスの信頼するルヴァイスの弟ラディスをソフィアの後見人として王位につける。
そうすれば誰一人、ソフィアと研究に害をなせるものはいなくなるだろう。
そうなるためには竜神官やリザイア家が無用になるだけの、研究の結果が必要だ。
(――にしても、いくら私を敵視しているにしても
最近竜神官達の行為はいささか強引すぎる。
こんな目に見えた嫌がらせをする連中ではなかった。
何か急がねばならぬ理由でもあるのか?)
「テオ、特殊部隊に竜神官達の内情を調べさせろ。
奴らはなにか隠してるのかもしれぬ」
ルヴァイスはそう思いながら窓の外を見つめるのだった。
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