第40話 うわさ
景色をみんなで見た後、私達はそのまま街中を歩いて帰る事になった。
木版にいっぱい書きながらルヴァイス様とお話していたら。
『あら、お嬢ちゃんもしゃべれないのかい』
一人の女性が話しかけてきた。ふっくらとしたおしゃべりが好きそうな人。
『他にも私みたいな子がいるの?』
私が聞くと、
「あまり大きい声じゃ言えないんだけどね、竜王陛下の所にきた聖女様もしゃべれないらしいよ」
それって私の事?
「なんでも喋れない上に、聖女の力がなかったらしくてね、役立たずって竜王陛下にすごい虐められてるって話さ」
なっ!!!
私が思わず違うって書こうとしたらルヴァイス様に止められた。
「この子にそういった話はしないでくださいっ!」
クレアさんが叫んでおばちゃんがしまったって顔をする。
「ご、ごめんよ、お嬢ちゃんが役立たずって意味じゃないよ?」
って、慌てて取り繕うの。
そんなことはどうでもいいの!!
なんでそんな噂が流れてるの!?
私はとってもよくしてもらって幸せなのに、何でルヴァイス様に虐められているなんてっ!!
私が言うより先にルヴァイス様に抱きかかえられる。
「行こう」
ルヴァイス様が足早に歩きだした。
私が悪く言われるのはいいの。だって本当だもの。
でもルヴァイス様が悪く言われるのは嫌。
だって私に幸せをくれた人だから。
いろいろお話を聞いてくれて、とっても優しい。
私の夢を、みんなの夢を応援してくれる。
それなのに世間では私を虐めて、自分たちのためなら世界なんてどうでもいい竜神官達がいい人で、私の事も世界のことも真剣に考えているルヴァイス様が悪い人。
こんなのおかしい。おかしいよ。
私が怒っていたら、人の居ない所でルヴァイス様が私を降ろして
「怒るなソフィア。その噂を流したのは私だ」
って言うの。なんで?なんでそんなウソの噂を流したの?
「いいか、ソフィア。噂など政争の道具にすぎない。私の評価などどうでもいい。
問題の本質をはき違えては駄目だ。
ソフィアが幸せにやっていると知れば、お前の母と妹がお前を取り戻そうとするかもしれない。
もしリザイア家が無理にでもお前を還せと言ってくるのなら、我らは戦争をも厭わない」
駄目、駄目!!戦争なんてダメ!!
私がイヤイヤと首を横に振ったら、ルヴァイス様が笑ってくれて
「そうならぬために、流した噂だ。不要な争いは我らも望まない。
不本意ではあるだろうが我慢してくれ」
そっか!これは私を守るための嘘の噂なんだ。
凄い!ルヴァイス様は頭がいい!!
『ルヴァイス様。ありがとう』
私が文字にして書けば、そのまま笑ってまた肩車をしてくれた。
ルヴァイス様は私を守るために悪い人になってくれた。そこまでして守ってくれる。
本当に凄い人。
私はルヴァイス様の期待にこたえられるかな。
頑張って聖気がなくても緑豊かな世界にしてみせる。
聖女がいなくてもなりたつ世界に。
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