第6話 聖女のお仕事

『レイゼルさん!出来たっつ!!』


 私は【錬成】の魔法でできたお野菜をレイゼルさんの所に持って行く。


 このレワの野菜は、とっても美味しいけど育つのにとても時間がかかり、実をあまり付けない。だから美味しくないけど実をいっぱいつけるお野菜とレワの野菜の苗を【錬成】の魔法でくっつけていっぱい育つ新しい野菜の苗をつくりだした。


 そしてその苗を植えて、今日育った実をレイゼルさんに見せたんだ。


「これはまた、上手に長所のみ組み合わせて融合できましたね。

 流石です。ソフィア様」


 いっぱい実った野菜を見ながらレイゼルさんが褒めてくれた。


 えへへ。

 この一年でお野菜をいっぱいできるようになったよ。

 レイゼルさんのお手伝いをしたくて【錬成】の魔法をいっぱい練習したもの。

 口で魔法は唱えられないけれど、心の中で唱えるとこの【錬成】の魔法は答えてくれる。

 魔法を唱えると変な魔力の流れみたいな粒粒の螺旋が見えて、それをくっつけるようにイメージするの。

 ただどの特性が組み合わさるかはランダムで短所ばかり組み合わさっちゃうこともあるんだ。

 だからいっぱいいっぱい魔法を唱えて、たくさん作るんだ。


『いつかこの魔法で作ったお野菜で、【聖気】がいらないお野菜も作れるかな?』


 そう私が紙に書いたらレイゼルさんが凄く驚いた顔をした。


「【聖気】がいらない植物ですか?」


 うん。そう。

 まだおばあ様が生きていた頃授業で習ったの。

 世界が聖女を必要としているのは、作物を作るのに聖女がもつ【聖気】を世界に撒く必要があるからだって。

 聖気は世界中のどこにでも存在するけれど、今はすごく少なくて、聖女が撒かないと作物を育てるには足りないの。だから聖女が必要なんだ。

 でも私は【聖気】をデイジアに全部持って行かれちゃった。昔反応していた聖女の石も反応しない。だから私は聖女のお仕事の実りはもたらせられない。


 でもこの【錬成】の魔法で聖気の必要がない作物をつくれれば、【聖気】がなくても聖女のお仕事、実りを世界にもたらす事ができるもの。

 力がなくても、私もちゃんと聖女のお仕事できるかなって。


 私がそう紙にかいて渡したら、レイゼルさんの手が止まる。


 どうしたんだろう?

 私が不思議に思って見てみていたら、レイゼルさんが今にも泣きそうな顔になる。


 ごめんね、ごめんなさい。

 私は何か言っちゃいけない事を言ったのかな?


 そう思って「あー」って手を伸ばしたら。そのまま抱きしめられた。


「……すみません。……本当にすみません」


 そう言って抱きしめてくれるレイゼルさんは震えていて、私は戸惑う。

 どうして? どうして泣いてるの? どうしてレイゼルさんが謝るの?

 ごめんなさい。私が変なことを言ったせい。

 どうか、レイゼルさんが泣き止んでくれますように。

 どうしていいかわからなくて、私はレイゼルさんの背中をぎゅっと掴んだ。



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