第40話 ほのぼの魔法の絨毯

「うわああああ…ああああ!?」


 暗闇を落ち続けていたのの花たちだったが、何かの上にぽふっと着地した。

 足元を触ってみると、ふわふわしていて少し暖かい。

【落下無効】を持っていない花音も、ダメージを受けてはいないようだ。


「何だろう…これ」


 のの花が不思議そうに撫でていると、謎のふわふわが突然猛スピードで動きだした。


「うわ!!振り落とされ…ない!?」


 普通なら振り落とされてまた暗闇へ落下だが、不思議とのの花たちはふわふわの上にとどまり続けている。


「あ、あそこに光見えるよ」


 花音が指さす先には、確かに一点の光が見えた。

 しかもふわふわは、真っ直ぐにそこへ向かっている。

 結構距離があるように見えたが、ものの十数秒で光までたどり着いた。

 のの花たちは、ふわふわに乗ったまま勢いよく光の中に突っ込む。

 そしてようやく、暗闇が消えて周りが明るくなった。

 と同時に、ふわふわの正体が判明する。


「花音、これって…」

「うん、間違いない」


 のの花と花音は、とびきりの笑顔で声を合わせた。


「「魔法の絨毯だ!!」」


 人が3人は乗れそうなサイズの青い絨毯が空中を飛んでいる。


「まさか本当にあるとはね」

「いよいよアラビアンナイトって感じしてきたよ」


 絨毯の下の地面は、どこもかしこもキラキラ輝いている。

 イベントのコインではなく、単なる財宝のオブジェクトのようだ。


 絨毯はスピードを緩めながら徐々に降下していき、ついに床へと着地した。

 降りがてらのの花が撫でてあげると、嬉しそうに体をよじらせる。


 次にどんな行動をするかで、のの花と花音の意見は完全に一致していた。


「魔法の絨毯があるということは…」

「あるということは…?」

「「魔法のランプもあるはず!!」」


 中に入っているのは青い体をした最高の友達か、はたまた邪悪な赤い蛇とオウムかは分からないが、ここまで来たら探さないわけにはいかない。


「ランプがあるなら、きっと目立つところに置いてあるよね?」

「そのはず」


 のの花たちは手分けして周りの捜索を始める。

 そして10分後、のの花が薄汚れたランプを発見した。


「ユカ!!あったかも!!」

「マジ!?今行く!!」


 花音が来たところで、のの花はランプを掲げる。


「おおおおお!!ぽいよぽいよ!!」

「擦ってみようか」


 のの花は右手でランプの側面をこする。

 しかし何の変化も起きない。


「外れなのかな…」

「説明ないの?」


 花音に言われてのの花はランプをタップした。

 使用可能なアイテムなら、これで詳細な情報が表示されるはずだ。


「あ、出た!!」


 アイテムの情報を伝えるウィンドウが現われる。



 《魔法のランプ》

 効果:5回擦ることで、いつでもどこへでも魔法の絨毯を呼び出せる。

「戻れ」と指示すると、魔法の絨毯はランプの中に帰る。



「魔人じゃないのかぁ…。でも、あの絨毯を連れて行けるってことでしょ?」


 花音は一瞬がっかりしたが、すぐに気を取り直した。


「さっき3回くらいしか擦らなかったから何も出なかったんだ。5回やってみるね」


 のの花はもう一度、ランプの側面を擦った。

 しっかりと5回。

 すると煙が立ち昇り、先ほどの青い絨毯が現われる。


「えっと…戻れ」


 説明の通りに指示すれば、絨毯は吸い込まれるようにランプの中へ帰っていった。

 大体使い方が分かったところで、ランプはアイテムボックスにしまう。


「さてと…」

「うん。さてと…」


 周りを見まわしてから、のの花と花音は声を揃えた。


「「誰だ!!出てこ~い!!」」


 その声に応じるように、周りから10人ほどのプレイヤーが出てくる。

 白い布で顔のほとんどを隠していて、目だけがかろうじて見えている状態だ。


「これまで獲得したコイン、全部置いていってもらうぞ」


 今回のイベントでは、プレイヤー同士のバトルによるコインの奪い合いも許可されている。

 彼らはのの花たちのコインを狙っているようだ。


「こいつら、ユノのこと知らないみたいだね」


 もしユノを知っているのなら、わざわざ自分のコインを奪われる可能性が高い勝負など挑まないはずだ。


「ちゃちゃっとやっちゃう?」

「そうだね」


 のの花&花音vs盗賊たちのコインを懸けた熱戦…というよりは一方的なスキルと装備の暴力が始まった。

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