第39話 アラビアン迷宮

 コインを集めること1時間。

 のの花と花音はそれぞれ、銅を20枚、銀を14枚、金を4枚集めた。

 イベントを終えてからも交換はできるので、イベント期間中はひたすらコインを収集している。


「次は?」

「もう、目をつけたところは周り終わっちゃったんだよね。だから、あとは適当に探すしかないかな」

「となると……ぶらぶら歩いてみようか」

「そうだね」


 金コイン4枚は、のの花たちの予想を超える収穫だ。

 正直、ここから血眼になって探しまくる必要はない。


「あら、ユノちゃんにユカちゃん」


 後ろから、2人の名前を呼ぶ声があった。

 振り返ると、サクラが手を振っている。


「サクラさん!!調子はどうですか?」

「まあまあね。金が3枚ってところ」

「私たちも同じくらいです」

「この辺にいるってことは、迷宮に行ったのかしら?」


 サクラの質問に、2人は首を傾げた。


「迷宮って何ですか?」

「あら、行ってないのね。ここから少し歩いたところに、かなり複雑な迷路があるのよ。出てくるモンスターはそこまで強くないけど、クリアするのには結構時間がかかったわ」

「コインゲットできますか?」

「出来るわよ。金が1枚に、銀が3枚だったわ」


 ちょうど、目的地がなかったところだ。

 2人は、その迷宮を攻略することにした。


「行ってみます」

「ええ。頑張って攻略してみて」


 サクラと別れ、教えてもらった方向へ足を進める。

 10分ほど歩くと、大きなライオンの頭にたどり着いた。

 口が目一杯に開かれていて、そこから中に入れるようになっている。


「何か、アラビアンナイトって感じだね」

「空飛ぶ絨毯とか出てきそうだよね」


 そんな会話を交わしながら、2人はライオンの口の中へ入っていく。

 すると、ゴゴゴと音を立てて口が閉じた。

 どうやら、後戻りはできないらしい。


「さて、どうしようか」


 目の前には、3つの地下へ続く階段がある。

 早速、分かれ道のようだ。


「ヒントみたいなのもなさそうだし、勘で選ぶしかないのかな」


 のの花の言う通り、ヒントらしきものは全くない。


「じゃあ、じゃんけんでユノが勝ったら右、私が勝ったら左、あいこになったら真ん中っていうのはどう?」

「それいいね」


 花音の提案により、じゃんけんで進路を決めることになった。


「最初はグー、じゃ~んけ~ん」

「「ぽいっ!!」」


 のの花はグー、花音はパー。


「左だね」


 花音が勝ったので、左に進むことになった。

 階段の幅は、人1人が何とか通れるくらい。

 のの花が先に進み、花音が後からついていく。


「だんだん暗くなってない?」


 花音の問いかけに、のの花は頷いた。

 確かに、下へ向かうにつれて暗くなっている。

 慎重に慎重に降りているが、階段の一番下は暗くて見えない。


「そろそろ一番下かな?」

「だいぶ降りたよね。あ、一番下かも」


 のの花は、ゆっくりと右足をすらせた。

 さっきまでの階段よりも長く地面が続いている。

 どうやら、階段は終わったようだ。


「大丈夫?」

「うん」


 花音と手を繋ぎ、2人とも階段を降り終える。


「こんな暗いと、襲われても分からないね」

「ね~。ゆっくり進もう」


 のの花は花音と手を繋いだまま、一歩を踏み出す。


「あ、あれ?」


 上げた足を下ろす地面がない。


「うわわわ!!穴が開いてる!!」

「えええ!?」


 のの花はそのままバランスを崩し、ぽっかり空いていた穴に落ちていった。

 手を繋いでいた花音も、道連れになって落ちていく。


「「また落ちるのぉぉぉ!?」」


 本日2度目の、暗闇急降下が始まった。

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