第38話 ほのぼの連係プレイ

「わらわの安眠を邪魔するのは誰じゃ…」


 のの花たちの前に現れたのは、3mはあろうかという巨大な女だった。

 着物を着ていて、左の腰には大きな刀を2本差している。


「貴様か…貴様らか…」


 2人を見下ろし、忌々し気に睨みつける。

 片方の刀に右手を掛けた。


「これがここのモンスター……」

「でっか……」


 刀の大きさを見て、女の攻撃範囲に入らないよう距離を取る。


「ユノ、戦える?」

「いけるはず。ユカは、弓矢で後ろから支援お願いできる?」

「もちろん」


 女がさっと刀を抜く。

 のの花も武器を長剣に持ち替え、さっと距離を詰めた。

 刀と長剣がぶつかり、キンッと音を立てて火花を散らす。


「目障りだ……」


 女はもう一本の刀を左手で素早く抜き、のの花の胴を狙った。


「【驚異的な回避術】!!」


 すんでのところでスキルを使い、何とか攻撃を回避する。


「まずいな……いきなり使わされちゃった……」


 二刀流の攻撃を回避しつつ、のの花はこのモンスターを倒すための作戦を練る。

 相手はただ武器が大きいだけではなく、パワーも強い。

 短剣に持ち替えればのの花も二刀流にできるが、それではパワフルな攻撃を弾き返せるとは思えない。


「【水斬剣】!!」


 長剣を鋭く一閃する。

 しかし、モンスターを斬ったという手ごたえがない。


「甘い……」


 斬られた個所を見つめ、女が呟く。

 のの花の攻撃は、着物の帯を斬っただけに過ぎなかった。

 はだけた着物の奥に、武士が着るような鎧が見える。


「ユノ!!一瞬伏せて!!」

「分かった!!」


 伏せたのの花の頭上を、花音が放った矢が通り過ぎる。

 しかしそれも、硬い鎧に阻まれた。


「刺さんない……」


 確実に強くなっている花音だが、モンスターのDEFの方が上回っているようだ。


「ユカ!!多分、矢が効くのは頭だけだと思う!!」

「了解!!」


 頭だけは、守る物が何もない無防備な状態だ。

 高さはあるが、弓矢なら問題ない。


「【焔矢】!!」

「【雷帝の怒り】!!」


 花音が燃える矢を、のの花が雷を放つ。


「【雷斬】……」

「嘘……」


 女は目にもとまらぬ速さで2本の刀を振り回し、のの花の放った雷をさばききった。

 呆然とするのの花。

 しかし相手も、花音の放った矢までは対処できていない。


「刺さった!!もう1回【焔矢】!!」


 燃える矢が、女の右目に突き刺さった。

 花音は続けざまに、もう1本の矢を放つ。

 今度は、女の左目に突き刺さった。


「見えぬ……暗闇……」


 両目を潰された女は、無闇矢鱈に刀を振り回し始める。

 規則性のない、めちゃくちゃな攻撃。

 それでもパワーと大きさを考えれば、かなりの威力になる。


「ユノ、あの鎧は壊せる?」

「多分」

「1か所崩してくれれば、私があいつの動きを止める。そこをユノがドーンでどう?」

「オッケー。それでいこっか」


 花音が刀の間合いから逃れる。

 のの花は短剣に持ち替え、刀をかいくぐって相手の懐に飛び込む。


「【閃撃の双剣】!!」


 鎧の1か所に集中して、のの花が連撃を叩き込んだ。

 何とか硬い鎧を崩し、弱点を作る。


「ユノ!!避けて!!」


 指示通りにのの花が移動すると、鎧の崩れたウィークポイントが丸出しになった。

 花音が弓を引き絞り、その一点へ狙いを定めている。


「【痺矢】!!」


 放たれた矢は、確実に鎧の壊れた部分を捉える。

 射られた女の動きが、ぴたりと止まった。


「今だ!!」

「任せて!!【雷帝の怒り】!!」


 《時遡の指輪》の効果で、【雷帝の怒り】のクールタイムがリセットされている。

【痺矢】で体が動かない相手は、刀を振ることが出来ず雷に撃たれるしかない。


「【太陽砲】!!」


 のの花は重ねて火の玉を放つ。

 女の巨大な体を吹き飛ばし、地面に倒した。


「【氷柱の雨】!!」


 とどめは氷の攻撃。

 女は声を上げることもできず、横たわったまま消えていった。


「ナイス!!」

「やったね!!」


 2人でハイタッチを交わす。

 うまく連携して、強敵を倒すことが出来た。


「コイン、落ちたね」


 モンスターの消えた後に、金色のコインが6枚残されている。


「はい、ユカの分」

「ありがと」


 コインを3枚ずつ分け合い、出現した転移門から地上に戻った。


「一気に金が3枚とは……。ユノ、いい所見つけたね」

「でしょ~」


 メダルには、銅・銀・金の3色がある。

 銅が10枚で銀1枚、銀が10枚で金1枚が獲得できる。

 金色のメダルは、高レアのスキルや装備と交換可能だ。


「さて、次のポイントに行こうか」

「だね~」


 のの花が目をつけた次なるポイントへ、2人は並んで歩き始めた。

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