第37話 ほのぼの第2回イベント開始

「お久しぶりっ!!SSO!!」


 ログインするなり、花音は手を高々と突き上げた。

 メンテナンスはとっくに終わっている。

 それでも花音は、なかなかインすることが出来なかったのだ。


「ちゃんと課題やったの?」


 のの花が聞くと、花音はグーサインで応じた。

 ちなみにのの花は、メンテナンスが終わるなりさっさとログインしている。

 今日行われる第2回イベントのために、マップの確認をしていたのだ。


 そう、第2回イベントは今日。

 花音はSSOのメンテナンス日から、1週間ログインしていないのである。


「全くさ、お母さんも鬼だよね。イベント前だってのに」


 のの花がゲームを再開してから、見張る者のいなくなった花音もSSOをやろうとした。

 しかし運悪く母に見つかり、課題が終わっていないことも発覚。

 あえなく、ゲーム禁止を言い渡された。

 禁止明けで、いきなりイベントという訳である。


「ユカが悪いでしょ」


 のの花がじっとした視線を送ると、花音はてへっと舌を出した。


 何はともあれ、イベントには参加することが出来る。


「今回は宝探しイベントだよね」

「うん。私なりに第二層を歩いて、コインを隠せそうなところをマップにマークしておいた。何か所かあるから、回ってみようよ」


 今回のイベントでは、特定のどこかでスタートを待つということはない。

 各自好きな場所で時間を待ち、イベント開始のお知らせが届いたところでコイン探しを始めるのだ。


 パーティーを組むことも許可されているので、のの花と花音は2人でイベントに参加する。

 サクラ、グレン、アイリスは、それぞれソロで参加するそうだ。

 リュウは参加しないらしい。


「さてと、あと1分だね」


 イベント開始まであと1分。

 アイリスちゃんは出てこないが、代わりにカウントダウンのウィンドウが出現した。


「「5、4、3、2、1、0!!」」


 2人で秒数を数え、イベントがスタートする。


「さてさて、まずはどこに行くの?」

「すぐ近くだよ。と、その前に」


 のの花はその場にしゃがんで、花音に背を向けた。


「私の背中に乗って。おんぶみたいな感じで」

「え?何で?」

「いいから」


 花音は変に思いつつも、おんぶしてもらう。

 のの花はゆっくりと立ち上がり、ハンマーを手に持った。


「えいっ!!」


 足元の地面を思いっきり叩く。

 すると、ボフッと音を立てて地面が抜けた。

 当然のごとく、のの花たちは下へと落ちていく。


「うわああああああ!!!!」


 何も知らなかった花音は、悲鳴を上げながらのの花にしがみついた。


「ちょっと!!どこまで落ちるの⁉」

「分かんない!!」

「はああああああああああああ!?!?!?」


 20秒ほど落下したところで、2人は地面に叩きつけられた。

 というより、のの花だけが下敷きになって地面と衝突した。


「ちょっ!!ユノ大丈夫⁉」

「大丈夫~」


 のの花はゆっくりと立ち上がり、乱れた服装を整えた。

 すごい高さを落っこちたのに、ダメージを追った様子もない。


「何でピンピンしてんの…?」

「えへへ。新しいスキルを取りましてね。【落下無効】っていうスキルなんだけど」

「何それ」

「落下ダメージが無効になるんだよ。ユカが入れない間に、新しいスキルが欲しいと思って取ったんだ」


 ちなみにどうやって取ったかといえば、高いところから飛び降り続けたのである。

 飛び降りて、ダメージを食らったら回復して、また飛び降りる。

 そんな狂ったことを繰り返していたら、飛び降りてもダメージを受けなくなった。


「ユノのことだから、何か変なスキルや装備を取ってるとは思ったけどね」


 呆れ気味に花音が言う。

 ちなみに、のの花が機関銃を持っていることを花音はまだ知らない。


「で?ここにコインがあるの?」

「あるかもしれない、だけどね。でも、確率は高いと思うよ」


 花音はきょろきょろと辺りを見回した。

 今いるのは洞窟のようだ。

 よく耳を澄ましてみると、奇妙なうなり声がする。


「この声は何?」

「モンスター」

「それは分かるよ。どんなモンスターがいるの?」

「それは分からない」

「分かんないの⁉」

「分かんないよ」


 平然としているのの花と、慌て始める花音。

 ザッザッと地面を踏みしめる音が、徐々に近づいてくる。

 怖がる花音の前に出て、のの花はのほほんとした笑顔のままハンマーを構えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る