救い

嗚呼、嗚呼、嗚呼


なんて素晴らしいのだ

なんて味があるのだ


まさに現実は小説より奇なり

わたしはこれまでこのようなことを知らなかった!!


今日、内定者の交流会があった。

交流会の内容は「自分史」


正直言ってなんでこんなに困った題材なのだと思った。

私の人生はタブーだらけだぞ

そういう全くの不安を感じながら学会の発表があったのでやっつけで自分史の原稿を終わらせて臨んだ今日


結果は感嘆。

なんてみんな面白いのだ。

人と話すのが苦手と言いながらも健気に接客のバイトをこなして新人を育成するまでなったものもいる。


何度とない困難に見舞われるが夢を追う者もいる。

その人荒れている中学で厳しい上下関係のサッカー部に入ったり、コンビニの店員で覚えてられないほどのクレーマーに対応すしたり大学受験に落ちたり何社も内定をもらえなかったりした。そうして心が折れそうでもなお、中学の時に本で見た星についての感銘を志し恒星の雲について研究を大学院まで行った。しかし残念ながらそれを仕事にすることは叶わずこの会社に来た。


もう一人は学歴一家に育って兄弟は京大にいくほど頭がよかった。本人も中学までは勉強しなくてもかなりできたらしい。そんな人でも大学は落ち、当初はそれを受け止めきれず仮面浪人したがそれでも落ちた。そのときその人はなんどもなんども自分に向き合ったと言っていた。そしてなんどもなんどもなんども強調して「受験に受かっても受からなくてもその人なりの人生がある」と言っていた。それでいて突飛なユーモアも持ち合わせているのだから面白い。


最後の一人はなんとも受け答えがわかりやすくまじめだ。それでいて高校ではボランティアをやったり大学では他学科の友達が欲しいといってサークルをやったりと社交家だ。数学科で暗号関連を研究していたらしい。やはりそういう人は何という問題にはなにという答えがあるとはっきりしているところが実に数学科「らしい」ところである。


嗚呼、人それぞれ困難という暴風雨の中をそれぞれの方向から進んできた。いや、もはや進んでいるか退けているのかは問題ではないそれぞれごとに向かっている。


なんて人は素晴らしいのだ。


私が接してきた社会を妄信する人形は一人一人が真っ暗な洞窟から見た廃墟、なだれかかる樹をシルエットにした砂浜、寂れかけた時間が進まない街、暗い深海をに差し込む光、寒空に差し込む朝の光のような私を震撼させるものを持っていた。


更に情け深いことに私の実もないなんて言っていいかわからない人生の話を聞いたうえで好意的に反応してくれた。もちろんこのような場で批判するようなことを言うやつはいないがそれでも私の回りくどく気まぐれで一貫性のない何をいいたいのかわからない話を聞いたうえでそれを示してくれた。

私が言ってくれた言葉は次のようなことだ。


「責任感があり、考えて行動できる方だと思いました」

「新しいもの、自分とは違うものについての関心と理解」

「プログラミングに対する熱を感じました!」

「目先のことに全力になれることが素晴らしいと思いました!」


ああ、もう今思い出しても熱い涙が出てくる。


私としてはどれだけお世辞を言おうとしたところで感じたものをからしか人は言葉を紡ぐことはできないと思っている。

たとえそれが最も、これしか言うことがなかったからだとしてもそれはその人の感じたものの中で最も褒められることであることには変わりはないと思う。


本当にありがとう。

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