夜の街は余りにもきらびやかでした
一体どれほど身を沈めているのだろう。私は自分に信条のようなものを課さずにはいられないのである、幸せを目指し苦痛を避けようとか、自分の理想を叶えようだとか、最近だとしいていえば自由に選択しようだとかだった。どうにもそれがないといけないもので自分のやっていることすべてに納得できないのだ。この通りにしないと以前のように学校に行くことも正当化できなくなってしまう、だけど言われたからただやるというのは意味がない。そういう板挟みで答えを見つけられずにいる。それをどうにかしようと善なる世界でないことまで説明できる世界である「デミアン」の小説を読んだし今は「車輪の下」を読んでいる。こうする前は自分というものの役割を見出そうと心理学の本を読んだり人の生物学についての本も読んだ。脳内物質と感覚について読んだし自分という存在そのものとして意識というものが何であるかも読んだ。それらは全部実のところ、自分が社会に求められている仕事とか勉強とか人との関わりをさせるための解釈だった。それ自体がいいことか悪いことかもう先に進むのが恐ろしくて判断できるものではありません。それを世俗的だと言って学校を拒み友達を拒み家族を拒んだこれ以上ない自堕落を知っています。最後には生まれながらに人であるということを憎み何度も夜を徹夜したり一日食事を取らなかったり一週間風呂に入らなかったりしました。けどそこには何もありませんでした。これほど夢の中にいるようなふらつきながらも砂漠に一人立っているような空虚な時をしりません。髪は油でギトギト、顔はニキビでぶつぶつで力のないもの。口の中は微生物の動きが感じられるほどネトネトで体は肌同士がくっつきまくって不快極まりないもの。
かといってみんなのいうすごい人間になるのは大変でした。学校では月曜にびっしり6ページほどの出題範囲の漢字テスト。火曜は化学の周期表のテスト。それに火曜から金曜は部活が7時まであり火曜日と木曜日はそこから塾があります。水曜日には塾の宿題の数学の練習問題があり、数学は毎回2問の宿題があります。これがまた難しいものでわからないときは2時間かかるときもあります。英語は毎回発音テストで隣の人と発音があってるか単語を1ページ読まされます。これにも時間をかけなくてはなりませんでしたし、土曜にはには柔道部の部活が半日以上ありました。先生たちは国公立大学の良さを学年の集会で語っていたのでそのつもりだったようです。私も当初はそのつもりでしたが中学でやってきた競争の末の更に激しい競争を今行っていたのでそこに疑問を持たずにはいられませんでした。友達とは青春と呼ばれるよな素晴らしいものを目指しているつもりでした。なので入学当初から塾の合宿で知りあった別の中学校の人がいたことから席の近い人と自分の中学校がいかに荒れていたかをネタにして仲良くなったつもりでした。しかし最初に入った弓道部でコンプレックスから全国優勝するという目標をひそかに持っていた私は場所の問題からたくさん練習ができないと知り周りともそりが合わずに辞めてしまいました。それで部活を辞めて同じクラスの仲のいい子のいた柔道部に入りました。当初はそれまでクラスで机で話していた友人が正面向いて柔道着を着るというものに滑稽さがあり楽しくやっていたはずでした。しかし自分について話すことをしてこなかった私は話すこともなくなりどう接していいかわからなくなりました。それでふと家で私がテレビをみながら途中まで飲んでいたジュースの缶をを父がこぼして「こんなとこにおいてあるのが悪い」とキレられた話をしたら「それはお前が悪いんじゃないの」と言われてしまいました。その時は私は父のことで悩んでいました。家で夜中に勉強していてくしゃみをしただけで「お前のせいで眠れなくなった。どうしてくれるんだ」と大きな怒鳴り声で怒られました。風呂場の換気扇が回っていなかったりこたつを切り忘れていると「金稼いでやってるのは誰だと思ってんだ」と怒鳴られました。私が風呂に入っているときに家に帰ってくると風呂が長いといって「なんで人のこと考えられないんだ」といって怒られました。それで父が同じことをしたときにそれを言うと学校を辞めさせるとかとか塾を辞めさせるとか言って脅ししまいには顔を殴られました。そんな私はとてもそれほどある学校の仕事をこなせる余裕はなかったのです。そんな辛うじて学校に出て家に帰ることを繰り返していた私がその悩みを人生で初めて口に出したものも否定されてしまいました。私はその時みんなの言うすごい人になりたかっただけでした。京大に受かり学問的な素晴らしさを感じることができる人になりたかった。友達に囲まれ面白い人だといわれる人になりたかった。雰囲気もカッコよく好きな人に「好きです」と自信を持って言える人になりたかった。部活でも全国大会に行くような文武両道の人と言われたかった。父に怒られない人になりたかった。
だけどそこまでなるには頑張れる理由がなかったのです。もう頑張るのが怖かった。中学生の時に頑張って頑張ってきた結果がこれならもう頑張ることの意味なんてわからない。そう思ってしまわずにはいられませんでした。
そしてそれからは頑張らないと決めました。ゲームをしたり動画を見たりしながら全てを否定しようとしました。学校も会社も家族も友達も信じることなんてできない。そしてしまいには自分さえも信じられなくなり、全てのことに意味を見出せくなりました。頑張っても頑張らなくても私には意味なんてありませんでした。私は何を考えればいいのでしょう。私は何をすればいいのでしょう。私は何を選べばいいのでしょう。私とは大した面白みのない人間です。みんなが嫌う悲しみと虚しさに包まれたものです。それが私であるのにもう楽しいことなんて期待しないでください。話すことで醜い私を晒さないでください。それがあなたのためであり、私のためなのです。もうどうしようもないのです。
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