#178 唾を吐き捨てて去る男
その朝、一人の老人が日課の散歩をしていると、ボロボロの服を着た男が倒れているのを見かけた。老人は杖で男の身体を何度か小突く。男が目を覚ました。
「お前さん、大丈夫か」
男はかすかに上体を起こし、辺りを見回す。既に陽は高い。
「お前、メイカのところの居候かえ?」
男は老人を見る。しかし何も答えない。彼は老人の杖を払いのけると、よろよろと立ち上がり、荷物を背負って歩き始めた。その様子が異様に映ったのだろう。老人は、好奇心に駆られて男の後を付いていく。彼は広場を避けるかのように、裏の小道を歩いていった。
男は町の北外れに差し掛かった。ちらりと振り返った男は、苦虫を噛み潰したような形相で唾を吐き捨てて、去っていった。
#300へ進む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます