#176 告発

 どの段階で知ったかはともかく、ハライソはメイカの甥が奉公に来たことと、そこで賃金や火の器を巡る一悶着が起こったことを知った。領主は執事に対して何事かを言った。ホウリシットはハライソの意向を自分なりに汲み取り、ホノウミに対し、同僚達の間で問題を片付けるよう指示した。シットとホノウミの目的は、火の器二人に私刑を加え、農場の秩序を回復することにあった。

 しかしハライソの目的は、この一連の展開を利用して、自ら場を平和裏に治め、あらためて農夫達が自らに服するという演劇を仕立てることにあった。だから彼は、事が起こる前でもなく、事が終わった後でもなく、まさに事が起ころうとするときに動けるよう、館の窓から監視を続けていたのである。

 ………… …………

 以上があなたの読み解いた筋書きだった。だが、それが真実だったとして何になるだろう? ハライソも、その上演費用として給金を出そうとしていたのに。いずれにせよ、あなたがこの真実ないし妄想を表明する機会は与えられなかった。

「もうよい!」ホウリシットが言い放つ。「この無礼者め、やはりお前は秩序を乱す火の器であった! メイカ、お館様のご恩にこのような形で報いるとはな! ホノウミ、後のことはお前に任せる。お館様、戻りましょう」

 ハライソが立ち上がって言う。

「平和的な解決が受け入れられなかったことは、残念だね。ホノウミ、私は舞台を降りるよ。君がこの猿芝居とやらを仕上げることになった」

 ハライソとシットは館へ去った。

 陽は落ち、かがり火に照らされながら、私刑が再開される。あなたが当初ちらりと予想した通り、あなた達は拳によって散々な目に遭い、さらにあなたは腰に隠していた金銭を巻き上げられた。さらにもう一つ。あなたの推理が正しければ、一人の観客がこの様子を見下ろしている。

 #177へ進む。

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