#167 ハライソの裁定

 陽の落ちかけた休憩場所に、いくつかのかがり火が灯された。

 領主ハライソと執事シットが椅子に座り、その隣に農頭ホノウミが立つ。それに向かい合う形であなたとメイカが地面に腰掛ける。他の者達は各々あなた達を取り囲んだ。

「さあ、私が判事だ。皆の話を詳しく聞こう」

 あなた達はハライソに向かってこれまでの経緯を話した。シットは司会役として事あるごとに口を挟んだが、ハライソは根気よく皆の話を聞いた。皆の言い分を聞き終えたところでハライソは口を開いた。

「よし、もう十分だろう。まずメイカとエイカ。君達にはつらい思いをさせたようだね」

「とんでもねえです、ハライソ様」メイカが応じる。「話を聞いていただければ、俺はもうそれで十分です」

「だが、ちょっとした誤解から始まったのだとしても、この揉め事の原因が君達にもあることは認めないわけにはいかない。そうだね、メイカ」

「仰るとおりです。申し訳ねえです」

 メイカがそう言うのに応じ、あなたもハライソに頭を下げた。

「残りの者達も、メイカやエイカに農場秩序擾乱の意図がなかったことはわかったと思う」

「ですが……」「しかし……」シットとホノウミが口々に不満を言おうとする。

「ホノウミ」ハライソは一瞬だけ表情を硬くし、すぐに崩した。

「君はこの農場の秩序を守った。君は農頭の務めを果たした。あらためて、その働きを褒めよう」

「はっ」ホノウミは畏まった。シットもまた口をつぐんで同意の様を示した。

「さあ、最後にエイカ。メイカのためと言い、ご恩のためと言って働いてくれた君を、手ぶらで帰らせるつもりはないよ。だが君の仕事振りの評価については、農頭の言葉を信じるしかない」

「勿体ねえ、勿体ねえ!」

 メイカがひざまずいて言う。今はまだ、あなたが何かを言う時ではない。

 #168へ進む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る